こんにちは、しーちゃんです😊
現役看護師・クリティカルケア認定看護師・特定行為研修修了者として日々臨床で働きながら、このブログでは看護・医療の知識をわかりやすく発信しています。
今回は朝ドラ「風、薫る」第7話(2026年4月7日放送)をナース目線で深掘り解説します!
第7話タイトルは「女け」——りんが結婚し、奥田家での生活が始まります。夫・亀吉との関係、翌年生まれた娘に「女け」と言い捨てて立ち去る夫。涙をこらえてきたりんがついに泣く場面が心に刺さります。
「看護と直接関係ない話じゃない?」と思うかもしれませんが、ナース目線で見ると、この回には明治時代の女性の健康・ジェンダー・出産・職業病・そしてりんが看護師を目指す動機の原点が詰まっています。
📺 この記事でわかること
・第7話「女け」のあらすじをしーちゃんが解説
・明治時代の「嫁」の生活——精神的・身体的な健康への影響
・直美が働くマッチ工場と「燐毒症(りんどくしょう)」——職業病の歴史
・「女け」という言葉が示す明治のジェンダー観と健康格差
・明治時代の出産事情と産褥期のリスク
・りんが看護師を目指す「本当の動機」をナースが読み解く
第7話「女け」あらすじ——りん、嫁ぐ
第7話は、りん(見上愛)の祝言(結婚式)から始まります。母・美津(水野美紀)や安(早坂美海)、中村(小林隆)らに見守られ、運送業で成功した奥田亀吉(三浦貴大)のもとへと嫁ぐりん。
奥田家は元飛脚から明治の運送業で成功した家。亀吉はりんより17歳年上で、大酒飲み。学のあるりんのことが気に入らず、二人の夫婦関係は最初からぎこちないものでした。
義母・貞(根岸季衣)は「家老の娘が産んだ子だから箔がつく」という言葉を口にします。りんが「人」としてではなく「家の格をあげる道具」として迎えられたことが、この一言に表れています。
りんは仲睦まじい夫婦になろうと懸命に尽くしますが、亀吉は飲酒癖があり、学のある妻を疎ましく思っていて、関係はなかなか進展しません。
翌年、娘が生まれる——「女け」という言葉
翌年、りんに子どもが生まれます。しかし亀吉は生まれた子どもが女の子だとわかると「女け」と言い捨て、名前を妻に任せてその場を立ち去ってしまいます。
父の死でも涙しなかったりんが、このとき初めて涙を流します。生まれた娘・環(宮島るか)を抱きながら泣くりん——その涙は、悲しみと諦めと、それでも続けようとする強さが入り混じったものでした。
直美はマッチ工場で働きながら英語を勉強
一方、直美(上坂樹里)はアメリカへの憧れを胸に、マッチ工場で働きながら英語の勉強を続けています。辛い環境でも前を向く直美の姿が、りんとは対照的に描かれています。

しーちゃん
直美がマッチ工場で働いてるシーン、看護師目線で見るとゾッとするんよね。明治時代のマッチ工場って白燐を使ってたから「燐毒症」っていう深刻な職業病があったんだよ。

みらいちゃん
燐毒症って何ですか…?聞いたことなかったです。

しーちゃん
白燐が体に入ると顎の骨が壊死するんよ。最初は歯が痛む程度なんだけど、だんだん顎が光ったり腐ったりして…。現代だったら絶対に許されない労働環境だよ。直美があそこで元気に働いてるの見て、ドキドキしながら画面見てた。
ナース目線解説①:直美のマッチ工場と「燐毒症」——明治の職業病
直美が働く「マッチ工場」。この描写は、現代の看護師の目には非常に重要なシグナルとして映ります。明治時代のマッチ工場には、今では考えられない深刻な健康被害が存在していたからです。
マッチ工場と燐毒症(りんどくしょう)とは
明治時代のマッチは、黄燐(おうりん)を使用して製造されていました。黄燐は非常に毒性が強く、長期間吸い込み続けることで「燐毒症(フォスィー顎)」という恐ろしい職業病を引き起こしました。
燐毒症の主な症状:
- 顎の骨(下顎骨・上顎骨)が腐っていく(骨壊死)
- 顎が暗闇で緑色に光る(黄燐の蓄積による発光)
- 顎の腫れ・激しい疼痛・膿の排出
- 顎骨の崩壊・変形・最終的には全身に毒が回り死亡
これは現代の医学で言えば「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(BRONJ)」に近い症状です。当時の医療では有効な治療法がなく、多くの工場労働者が苦しんだ歴史があります。
なぜ女性・子どもが働いていたのか
明治時代のマッチ工場は、低賃金で雇用できる女性や子どもが多く働いていました。工場内は燐の煙が充満し、換気も不十分。労働者たちはその危険性を十分に知らされないまま働かされていました。
直美がマッチ工場で働いているという設定は、「仕事を選ぶ自由がなかった女性たちの現実」と「健康を犠牲にする労働環境」を示しています。ドラマは明治の職業病という社会的問題を、さりげなく背景に込めているのです。
現代看護との接点——職業性疾患を知ることの重要性
今の時代も「職業性疾患(職業病)」は存在します。看護師として患者さんと向き合うとき、「どんな仕事をしているか・どんな環境にいるか」を知ることは診断・看護計画にとって非常に重要です。
- 建設業・工場労働者:石綿(アスベスト)による中皮腫・肺がん
- 農業従事者:農薬による神経障害・皮膚疾患
- 看護師・医療職:腰痛・感染リスク・バーンアウト
- 夜勤労働者:概日リズム障害・生活習慣病リスク
直美のマッチ工場という描写は、「働く人の健康」と「職業の環境」は切り離せないという、今も変わらないテーマを示しています。

みらいちゃん
りんが奥田家に嫁いでから、すごく窮屈そうに見えました。明治のお嫁さんって、そんなに大変だったんでしょうか?

しーちゃん
看護師の目で見ると「環境的ストレス」「社会的サポートの喪失」「自律性の欠如」が一気に重なる状況なんよね。実家を離れて知らない家に入る、夫の家族に従う、自分の意見は言えない。これって現代医学でも精神的・身体的ダメージが大きいってわかってる。

みらいちゃん
りんちゃんが笑顔を保とうとしてるの、余計に切なかったです…。
ナース目線解説②:明治時代の「お嫁さん」——精神的・身体的な健康への影響
りんが奥田家に嫁いだ瞬間から、彼女の生活環境は大きく変わります。看護師の目でこの「嫁ぎ」という変化を見ると、現代医学で言う「環境的ストレス」「社会的サポートの喪失」「自律性の欠如」という問題が一気に重なります。
明治時代の「嫁」の役割と心身への影響
明治時代、妻の役割は非常に明確でした。
- 夫と義家族に従う(「家」の論理が最優先)
- 家事・育児・家業の手伝いを一手に担う
- 跡継ぎ(男の子)を産むことが「使命」とされた
- 自分の意見や感情を表現することが抑圧された
- 実家との関係が断ち切られることが多かった(社会的サポートの喪失)
これらは現代医学的に見ると、慢性的なストレス状態・コルチゾール過剰分泌・免疫機能の低下・抑うつリスクの上昇につながる環境です。りんが「仲睦まじい夫婦になろう」と努力し続けた時間は、精神的な消耗との戦いでもあったのです。
「嫁ぐこと」という人生の転換点と健康
現代でも「引越し」「結婚」「出産」などのライフイベントは、ストレス研究において「ライフイベントストレス」として測定されます(Holmes and Rahe Stress Scale)。結婚は上位の高ストレスイベントの一つです。
りんの場合、これに加えて「見知らぬ土地への引越し」「学のある妻を疎む夫」「家の道具として見る義母」という環境が重なりました。現代で言えば、心療内科への受診が必要なレベルのストレス環境といっても過言ではありません。
「夫の言うことをよく聞くのですよ」——母の言葉の重さ
美津がりんに言った「旦那様の言うことをよく聞くのですよ」という言葉。これは当時の社会規範を反映した母の精一杯のアドバイスでした。
しかしこの言葉は同時に、りんに「自分の意見を持ってはいけない」「従うことが正しい」という価値観を植え付けるものでもありました。現代のDV(ドメスティックバイオレンス)研究では、このような「従うことが当然」という価値観が、被害に気づくことを遅らせる要因になることがわかっています。

しーちゃん
明治時代の出産って、今とは全然違ったんよ。産婆さんがいれば良い方で、多くは自宅で家族に囲まれて産んでた。産後ケアもない、衛生管理もない。

みらいちゃん
それって母子ともにリスクがすごく高そう…。

しーちゃん
そう!産褥熱って言って、出産後の細菌感染で命を落とす女性がものすごく多かった。今だったら抗生剤で防げるんだけど、当時はそれがなかった。りんの時代の女性にとって出産は文字通り命がけだったんよ。
ナース目線解説③:明治時代の出産——「お産」のリスクをナースが考える
りんが翌年に娘・環を産むシーン。現代の私たちには当たり前の「無事に出産する」という出来事が、明治時代においては命がけの出来事でした。
明治時代の妊産婦死亡率
明治時代の日本における妊産婦死亡率は、現代と比べると驚くほど高いものでした。衛生状態が整っておらず、専門的な産科医や助産師も不足していた時代です。
- 産褥熱(さんじょくねつ):出産後の細菌感染。現在は抗生物質で治療できるが、当時は致死的
- 弛緩出血(しかんしゅっけつ):子宮収縮不全による大量出血。輸血も輸液もない時代は即命取り
- 難産・胎位異常:帝王切開の技術も未熟で、分娩が長引けば母子ともに危険
- 産後の栄養不足:貧血・低栄養が回復を妨げた
りんがお産を終えて、娘を抱いて泣いている——その場面の裏には、「無事に生き延びた」という事実があります。明治時代の出産は、今とは比べ物にならないほどのリスクを伴っていたのです。
「産褥期(さんじょくき)」のケアとは
現代の看護では、出産後を「産褥期」と呼び、母体の回復に向けた特別なケアを行います。
- 子宮復古(子宮が元の大きさに戻るプロセス)の観察
- 会陰部の傷の処置・衛生管理
- 母乳育児のサポート
- 産後うつのスクリーニングとメンタルヘルスケア
- 睡眠・栄養・休息の確保
特に現代では「産後うつ」の早期発見が重視されています。出産後2週間以内に10〜15%の女性が産後うつを経験するとされ、看護師は産後の精神状態を定期的にスクリーニングします。
りんの場合——夫に「女け」と言われ、社会的サポートも限られた環境での出産。産後うつのリスクが非常に高い状況でした。りんが泣いた涙には、産後の感情的な脆弱性も重なっていたはずです。
「男の子が欲しい」——性選好(ジェンダー選好)と看護
「女け」という亀吉の言葉は、当時の「男尊女卑」という価値観の象徴です。男の子こそが家の跡継ぎ・家の財産であり、女の子は「いらない子」扱いされることも珍しくなかった時代でした。
現代でも、一部の地域・文化圏では男女による価値の差が根強く残ります。看護師として様々な文化背景を持つ患者さんと関わるとき、その価値観を理解しつつも、「すべての命は等しく価値がある」という看護の倫理的立場を保持することが求められます。

みらいちゃん
「女け」って言われてりんちゃんが泣きこらえるシーン、本当に胸が痛かったです…。あの一言で全部を否定されたみたいで。

しーちゃん
あの場面、看護師として患者さんが泣いてるときに重なって見えてたんよね。「大丈夫だよ」って言葉より、ただ隣にいること、涙を否定しないこと。りんにとって環ちゃんに「環」って名前をつけたのは、きっと自分の思いを込めた唯一の抵抗だったんじゃないかな。

みらいちゃん
そう考えると、あの名前付けシーンがまた違って見えます…!ただの名前じゃなかったんですね。
ナース目線解説④:「涙をこらえてきたりんが泣いた」——感情を抑圧することの健康への影響
「父の死でも涙しなかったりんが、このとき初めて泣いた」という描写は、単なる感動的な場面ではありません。感情の抑圧とその解放というテーマを、看護師の目で読み解くことができます。
「泣けない」とはどういう状態か
りんは明治の武家育ち。「感情を表に出さない」「強くあらねばならない」という規範の中で育ちました。父の死という大きな悲しみも、涙で表現できなかった。
現代の心理学では、感情を長期間抑圧することは以下のような影響をもたらすことがわかっています。
- ストレスホルモン(コルチゾール)の慢性的な高値
- 免疫機能の低下(感染症にかかりやすくなる)
- 心身症(胃潰瘍・過敏性腸症候群・緊張型頭痛など)のリスク上昇
- 感情の「麻痺」——喜怒哀楽が感じにくくなっていく
- 抑うつ状態への移行リスク
「泣くこと」の生理学的効果
一方で、「泣く」という行為には生理的な意味があります。
- 情動性の涙にはストレスホルモン(コルチゾール・ACTH)が含まれており、涙と一緒に排出される
- 涙を流すことで副交感神経が優位になり、心身がリラックスする
- エンドルフィンが分泌され、痛みや悲しみが和らぐ効果がある
- 泣くことで感情が整理され、次のステップに進む準備が整う
りんが「女け」という言葉で泣いたのは、ある意味で心が限界まで耐えてきたものを解放した瞬間です。看護師として、患者さんが泣くという行為を「弱さ」ではなく「回復の始まり」として受け取ることが大切です。
看護師として「泣いている患者さん」に向き合うとき
病院で患者さんが泣いているとき、新人看護師は「どうしよう」「なんて言えばいいの」と焦りがちです。でも実は、泣いている患者さんに一番必要なのは、隣で「静かに一緒にいること」です。
- 「泣かないでください」は言わない(感情を否定しない)
- 「大丈夫ですよ」と急がない(根拠のない保証は信頼を壊す)
- ティッシュを差し出す・手に触れるなど、言葉より先に体で寄り添う
- 泣き止むまで待つ——沈黙でいることを恐れない
- 「話せるときに話してくれればいい」という姿勢を示す

みらいちゃん
りんちゃんって、どうして看護師を目指そうと思ったんでしょうね?明治時代に女性が医療を目指すって相当大変なはずなのに。

しーちゃん
「誰かの役に立てる仕事がしたい」って気持ちと、「自分で生きていける力が欲しい」って気持ち、両方あるんじゃないかな。私が看護師を目指した理由とちょっと重なって見える。

みらいちゃん
しーちゃんが看護師になった理由、今度もっと聞かせてください!

しーちゃん
ふふ、そのうちね😊 とにかくりんは強いよ。大変な環境だからこそ、光が見えたときにまっすぐ走れる人って、本当に尊いと思う。
ナース目線解説⑤:りんはなぜ看護師を目指すのか——第7話から見える動機の原点
ドラマ全体を通して、りんは看護師(トレインドナース)を目指す道へと進んでいきます。第7話で描かれた「嫁ぐこと」「夫との関係」「女け」という体験は、りんが看護師を目指す動機の深部と繋がっています。
「自分の力で生きたい」という選択
明治時代の女性にとって、「結婚」は生活の保障を得る唯一に近い手段でした。しかし亀吉との結婚生活は、りんに「人として認めてもらえない」という深い傷を与えます。
看護師という職業を選ぶことは、単なるキャリア選択ではありません。りんにとっては「自分の意志で、自分の力で、自分の価値を作ること」への挑戦です。
「箔がつく」と言われた家での嫁生活ではなく、自分の知識・技術・判断力で人の命に関わる仕事を選ぶ——その決意の背景に、第7話の体験があります。
「看護婦=賤業」という壁を越えていく理由
当時「看護婦は賤業(いやしい仕事)」という偏見が根強くありました。にもかかわらずりんが看護師を目指したのは、「どんなに貶められても、自分の良心に従って生きる」という信念があったからではないでしょうか。
これはまさに、彼女の判断基準として描かれている「己の良心に恥じないか」という軸とつながります。結婚生活の中で「正しいことをしているのに報われない」経験をしたりんが、「良心に従って生きる場所」を看護の世界に見つけていく——その物語の背景に第7話があります。
現代の看護師が「なぜ看護師になったか」を問われたとき
実は現代の看護師も、自分が看護師を選んだ動機を問われることがあります。就職面接・自己紹介・キャリアの振り返り——様々な場面で「なぜ看護師に?」という問いに向き合います。
りんの動機が「自分の力で生きたい」「良心に従いたい」だったように、人それぞれの理由があります。大切なのは、その動機が今の自分の看護に生きているかどうかです。
💭 あなたが看護師を選んだ理由はなんですか?
患者さんを助けたかった・安定した職業だから・家族の影響……
どんな理由でもいい。その動機が今日の看護の力になっています。
りんが「なぜ嫌な現実を乗り越えても前へ進めるか」を考えると、
あなた自身の「なぜ看護師なのか」という答えが見えてくるかもしれません。

みらいちゃん
明治時代って、女性と男性でそんなに健康状態が違ったんですか?

しーちゃん
全然違うよ。栄養面でも、医療へのアクセスでも、労働環境でも、女性は圧倒的に不利な立場に置かれてた。「社会的決定要因」って言葉があってね、健康って個人の努力だけじゃなく、住む場所・収入・教育・性別で大きく変わるんよ。

みらいちゃん
りんちゃんが置かれてる状況、全部それですね。貧しい家、女性、教育の機会が少ない…。

しーちゃん
そう。だから看護師として「この人がなぜ病気になったか」を社会背景込みで考えることが大事なんだよね。りんの話、看護の本質を教えてくれてると思う。
明治時代の女性の健康格差——現代への教訓
第7話を見ていると、明治時代の女性がいかに「健康を守る権利」を持てなかったかが伝わってきます。ナースとして、この歴史的背景を知ることには大切な意味があります。
明治時代の女性の平均寿命と健康
明治時代の日本人女性の平均寿命は35〜40歳前後と言われています(現代は約87歳)。この差の背景には単なる医療技術の差だけでなく、女性の社会的立場が健康を直接左右していたという事実があります。
- 過重な家事・育児・農作業による身体的消耗
- 自分の食事を後回しにする慣習による栄養不良
- 声を上げられず、具合が悪くても医者にかかれない
- 妊娠・出産を繰り返すことによる母体の消耗
- 精神的ストレスの慢性化による免疫機能低下
りんが「女け」と言われた瞬間に泣いた涙——あの涙は単なる悲しみではなく、社会構造によって追い詰められた女性の体と心の限界のサインでもありました。
ジェンダーと健康格差——今も続く問題
明治時代の話を「昔のこと」として片付けることはできません。現代でも「ジェンダーと健康格差」は世界的な医療・公衆衛生の課題です。
- 女性は「症状を訴えても信じてもらえない」という経験をする割合が高い(メディカルガスライティング)
- 女性特有の疾患(子宮内膜症・線維筋痛症など)は診断に時間がかかる傾向がある
- DVや虐待の被害者は女性が圧倒的に多く、健康への影響も大きい
- 介護・育児の担い手としての役割が、女性の働き方・健康に大きく影響する
看護師は多様な患者さんと向き合います。その人の生活背景・社会的立場・ジェンダーに関わる経験を理解することは、より良いケアへの第一歩です。
「社会的決定要因」を意識した看護
現代看護では「健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health)」という概念が重視されています。人の健康は、医療だけでなく、教育・経済・住環境・人間関係・ジェンダーなどの社会的条件によって大きく左右されるという考え方です。
りんが経験した「選択の自由のない結婚」「認められない子育て」「社会的孤立」——これらはすべて健康の社会的決定要因です。明治のドラマを通して、看護師として「その人が置かれている社会的状況」を見る目を養うことができます。

みらいちゃん
第7話、看護師さん目線だといろんな疑問が出てきますよね。私も気になることいっぱいあって…!

しーちゃん
そうそう!視聴者のみんなからよく聞かれることや、私自身が気になったことをQ&A形式でまとめてみたよ。一緒に疑問を解決していこ😊
Q&A:第7話から考える看護の疑問に答えます
Q. 看護師として、亀吉のような「DVリスクがある夫」を持つ患者さんにどう関わればいいですか?
A. まず大切なのは、直接的に「DVですか?」と聞かないことです。患者さんが警戒し、むしろ話しにくくなります。「最近、自宅での生活はどうですか?」「安心して眠れていますか?」「ストレスに感じることはありますか?」といった問いかけから始め、安全な関係性の中で少しずつ状況を把握していきます。もし DVが疑われる場合は、一人で抱え込まず社会福祉士や院内の相談窓口と連携することが重要です。
Q. 産後うつはどうやって見分けるのですか?
A. 医療現場では「エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)」というスクリーニングツールを使用します。出産後2〜4週間で実施することが多く、10項目の質問に答えてもらいます。スコアが高い場合は専門的な支援につなげます。ただしツールだけでなく、日常会話の中で「眠れていますか」「食事は取れていますか」「誰かに助けてもらえていますか」と聞くことも大切です。
Q. 明治時代のマッチ工場の職業病「燐毒症」は現代に治療法がありますか?
A. 現代では黄燐を使ったマッチは製造されていないため、燐毒症は事実上なくなりました。しかし類似の症状(顎骨壊死)は、骨粗しょう症の薬(ビスフォスフォネート)や一部の抗がん剤を使用する患者さんに発生することがあります(MRONJ:薬剤関連顎骨壊死)。現代の看護師は、この薬剤リスクを理解した上で口腔ケアの重要性を患者さんに伝えることが求められます。
Q. 感情を長期間抑圧している患者さんには、どうアプローチすればいいですか?
A. 急いで「感情を出してもらおう」とすることは逆効果です。まず「ここは安全な場所である」という雰囲気を作ること、そして「話さなくてもいい」という圧力をかけないことが大切です。「最近、ふと泣きたくなることはありますか?」「何かつらいことがあっても誰かに言えていますか?」といった問いかけが、感情を持つことを「許可」するきっかけになることがあります。
Q. りんのような環境で育った患者さんと関わるとき、文化的な背景をどう考えればいいですか?
A. 患者さんの行動や言動を「変わってる」と判断する前に、「この人はどんな時代・環境・価値観の中で育ったのか」を想像することが大切です。これを「文化的コンピテンシー(Cultural Competence)」と呼びます。その人の価値観を否定せず、しかし健康に必要な情報は適切に伝える——そのバランスが看護師に求められます。
まとめ——第7話「女け」がくれた気づき
第7話「女け」は、看護の場面こそ少ないものの、看護師として知っておきたい視点が豊富に詰まった回でした。
- マッチ工場と燐毒症——職業の環境が命を左右する。労働と健康の関係は今も変わらない
- 明治の嫁の生活——選択肢のなさ・社会的孤立・感情抑圧は心身の健康を蝕む
- 明治時代の出産リスク——産褥熱・出血・産後うつ。現代の産科看護が守ってきたもの
- 「女け」という言葉——ジェンダーと健康格差は今も続く社会的課題
- りんが泣いた理由——感情の抑圧と解放。泣くことは弱さではなく回復の始まり
- 看護師を目指す動機の原点——「自分の力で生きたい」という意志がりんを動かす
「看護と関係なさそう」な場面でも、ナースの目で見れば新しい発見がある——それが「風、薫る」というドラマの奥深さだと感じています。
りんへのエール、そして今日も頑張るあなたへ
「女け」と言われても、娘に「環」という名前をつけ、前を向き続けたりん。その強さは、明治時代の規範の中でも「己の良心に従って生きる」という信念から来ています。
今日の現場で、誰かに怒られても、うまくいかなくても、それでも患者さんのそばに立ち続けている看護師のみなさんも、りんと同じ強さを持っています。
📝 第7話「女け」から学ぶ看護のポイント
① 職業病(燐毒症→現代のMRONJ)——働く環境が健康に与える影響を理解する
② 感情抑圧の健康影響——泣けない患者さんの背景を理解する
③ 産褥期ケア・産後うつスクリーニングの重要性
④ ジェンダーと健康格差——社会的決定要因を意識した看護
⑤ 文化的コンピテンシー——その人の背景を理解してケアにつなげる
最後まで読んでいただきありがとうございました😊 次回の解説もお楽しみに!
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このドラマには、医療・看護の教科書には載っていない「人の生き方・社会・歴史と看護の接点」が随所に描かれています。明治時代という遠い時代の話でありながら、今の臨床で使える視点が散りばめられている。
第7話のりんは、看護師でもなんでもない「嫁」として生きていた回です。しかしその生活の中に、職業病・出産・感情・ジェンダー・社会的決定要因という看護の本質的なテーマが宿っています。
ぜひNHKプラスや録画で、看護師目線で「風、薫る」を見直してみてください。いつもと違う発見があるはずです。
明治の看護師たちが「自分の力で生きる」ために切り開いてきた道の上に、今の私たちが立っています。りんが「女け」という言葉の中で泣きながらも前を向いたように、今日もあなたは患者さんのそばに立てています。それを誇りに思ってください。今日も一日、お疲れ様でした。

