【認定看護師・特定行為研修修了者が解説】【セミナー14】新人看護師に聞いてほしい フィジカルアセスメント〜E:全身評価〜

【認定看護師・特定行為研修修了者が解説】【セミナー14】新人看護師に聞いてほしい フィジカルアセスメント〜E:全身評価〜 新人看護師に聞いてほしい フィジカルアセスメント

今日も患者さんへの看護ケア、お仕事お疲れ様です。あなたの働きはきっとケアした方の助けになっています。今日を過ごせた自分を、よく頑張ったと認めましょう。

こんにちは!認定看護師・特定行為研修修了者のしーちゃんです😊

今回はフィジカルアセスメントシリーズの最終章、「E:全身評価(Exposure)」について学習していきましょう!具体的な観察項目は「体温と皮膚」です。

みらいちゃん

みらいちゃん

体温は毎日測っているからすぐに実践できそう!でも皮膚って言われると、何を観察すればいいのかよくわからないかも…

しーちゃん

しーちゃん

そう!体温のことも実はすごく奥が深いんだよ。皮膚も急変のサインが出やすいポイントだから、今日はしっかり解説するね。最後まで読んでくれると、明日の臨床で使えるようになるよ!

📌 この記事でわかること
✅ 急変を防ぐ全身観察として「体温・皮膚」を見るコツ
✅ 発熱した場合の対応と推奨されないクーリングについて
✅ 皮膚の観察ポイント(外傷・紅斑・点状出血・浮腫・チアノーゼ)
✅ 認定看護師が経験した実際の症例紹介

  1. ABCDEアプローチにおける「E:全身評価」とは?
  2. 1.体温を測定しよう
    1. しーちゃんの行動基準:体温の異常値ライン
    2. 体温測定時のポイント
  3. 2.要注意以上の発熱には迅速な対応を!
    1. 入院患者が急に発熱する原因TOP3
    2. 発熱時の検査予測:先を読む力をつけよう
    3. 発熱を見たら「SIRS基準」も確認しよう
    4. 発熱のパターンを知ると診断の手助けになる
  4. 3.発熱時のクーリングは必要?【根拠から考える】
    1. なぜクーリングは推奨されないのか?
    2. クーリングが有効なケース
    3. 発熱時に本当に必要なケア
  5. 4.皮膚の状態を観察しよう
    1. 4-1. 外傷・褥瘡・MDRPUの確認
    2. 4-2. 紅斑(こうはん)の確認
    3. 4-3. 点状出血と紫斑
    4. 4-4. 浮腫(むくみ)の観察
    5. 4-5. チアノーゼ・皮膚色の変化
    6. 4-6. 皮膚ツルゴール(脱水の評価)
    7. 4-7. 発汗の観察
  6. 臨床で使える!全身観察を素早くこなすコツ
    1. 「ながら観察」を身につけよう
    2. 観察した内容を「変化」として記録する
    3. 異常を見つけた時の「第一報」の型
    4. 新人看護師が全身観察で陥りがちな落とし穴
  7. 5.しーちゃんが経験した症例
  8. 6.よくある疑問Q&A【しーちゃんが答えます!】
    1. Q1. 患者さんの体温が37.4℃でした。これは報告が必要ですか?
    2. Q2. クーリングをしないと患者さんや家族に怒られることがあります
    3. Q3. 褥瘡とMDRPUの違いがわかりません
    4. Q4. チアノーゼと末梢冷感の違いは?
    5. Q5. 皮膚観察はどのくらいの頻度でやればいい?
    6. Q6. 紅斑を発見した時、何を報告すればいいですか?
  9. フィジカルアセスメントを「習慣」にするために
    1. 最初の1ヶ月の目標設定
    2. 先輩・認定看護師への相談を活用しよう
  10. 全身観察に役立つ!おすすめの勉強法
    1. 実践と振り返りが最速の上達法
    2. このシリーズブログを最初から復習しよう
  11. 7.まとめ:全身観察チェックリスト
    1. このシリーズで学んだABCDEアプローチの全体像

ABCDEアプローチにおける「E:全身評価」とは?

フィジカルアセスメントでは、ABCDEアプローチという系統的な観察の順番があります。

アルファベット意味主な観察内容
A(Airway)気道気道の開通・狭窄音・異物
B(Breathing)呼吸呼吸数・呼吸音・胸郭の動き
C(Circulation)循環血圧・脈拍・末梢循環
D(Disability)意識・神経GCS・瞳孔・麻痺
E(Exposure)全身評価体温・皮膚・外傷・その他全体

「E」は最後に来ますが、見落としやすいからこそ重要です。全身を「露出(Expose)して観察する」という意味も含まれており、衣類や寝具の下に隠れた皮膚トラブルを発見するための重要なステップです。

みらいちゃん

みらいちゃん

なるほど!AからDをやって最後に全身チェックするんですね

しーちゃん

しーちゃん

そう。ただし急変の兆候はAからEまでどこにでも出るから、「E」だけをぽつんとやるんじゃなくて、常に全身を意識しながら観察していくことが大切だよ

1.体温を測定しよう

体温は体温計で測定します。集中治療室や救急救命センターでは中枢温(膀胱温・直腸温など)を測定することもありますが、一般病棟では主に皮膚温(腋窩温)を測定します。

しーちゃんの行動基準:体温の異常値ライン

体温分類対応
37.5〜37.9℃異常値警戒(微熱)3時間以内に再検
38.0〜38.9℃要注意(高熱)報告 + 指示に従った対応
39.0℃以上即行動報告と迅速な指示に従った対応

体温測定時のポイント

  • 測定部位と方法を統一する:腋窩温は測定前に汗を拭き、正しく挟んでいることを確認
  • 前回値との比較が重要:「今日36.8℃」より「昨日36.2℃→今日36.8℃(+0.6℃)」の変化を捉える
  • 時間帯による変動を考慮:早朝が最低、夕方が最高になる日内変動が正常(約0.5〜1℃の幅)
  • 発熱パターンを把握:毎日決まった時間に上がる・常に高い・スパイク状など、パターンが診断の手がかりになる
みらいちゃん

みらいちゃん

前回値との比較って意外と意識できていなかったかも…

しーちゃん

しーちゃん

そう!「今日の数値」だけを見るんじゃなくて、「昨日との変化」を見ることで、悪化しているのか安定しているのかが判断できるようになるよ。カルテで過去の体温をさっと確認する習慣をつけよう

2.要注意以上の発熱には迅速な対応を!

要注意(38.0℃)以上の体温が出た場合は、解熱剤や追加の検査が必要になります。ただし、熱が出たらとにかく解熱剤を使えばいいわけではありません。

まず考えるべきは「なぜ熱が出ているのか」です。原因を特定・治療しなければ、解熱剤で一時的に下がっても必ず戻ってきます。

入院患者が急に発熱する原因TOP3

  1. 肺炎:術後・誤嚥・人工呼吸器関連肺炎など
  2. 尿路感染症:カテーテル留置・前立腺肥大・免疫低下など
  3. 腸炎:Clostridium difficile腸炎・ウイルス性腸炎など

発熱の原因はこれだけではありませんが(術後発熱・薬剤熱・深部静脈血栓・褥瘡感染など)、まずこの3つを頭に入れておくことで、報告・観察・検査の準備が素早くできます。

発熱時の検査予測:先を読む力をつけよう

原因がわからないまま発熱している場合、以下の検査が指示されることが多いです。指示が出る前に準備しておける看護師を目指しましょう!

💉 発熱時に医師が指示しやすい検査セット
【基本検査】採血・尿検査・胸部レントゲン
【培養検査】血液培養×2セット・尿培養・痰培養(・便培養)

ポイント:培養検査は抗菌薬投与前に採取すること!投与後では培養が陰性になりやすい

発熱を見たら「SIRS基準」も確認しよう

発熱している患者さんが敗血症(sepsis)に進行していないか確認するため、SIRS(全身性炎症反応症候群)基準を意識しましょう。

SIRSの4項目基準値
体温38℃以上 または 36℃未満
心拍数90回/分以上
呼吸数20回/分以上 または PaCO2 32mmHg未満
白血球数12,000/μL以上 または 4,000/μL未満 または 幼若球10%以上

2項目以上当てはまる場合はSIRSと判断し、感染症が疑われる場合は敗血症の可能性を考えて早急に報告・対応が必要です。

みらいちゃん

みらいちゃん

SIRSって言葉は聞いたことあったけど、実際の基準を知っておくと観察の精度が上がりますね!

しーちゃん

しーちゃん

そう!「体温が高い」だけじゃなくて「心拍数も上がってる、呼吸も速い」って複数のサインを組み合わせて判断できると、先輩や医師への報告がぐっと的確になるよ

発熱のパターンを知ると診断の手助けになる

発熱はその「パターン(熱型)」が、原因疾患を絞り込む手がかりになります。電子カルテのバイタルグラフを見て、どのパターンか意識してみましょう。

熱型特徴代表的な疾患
稽留熱(けいりゅうねつ)常に高熱が続き、日内変動が1℃以内大葉性肺炎・チフス・敗血症
弛張熱(しちょうねつ)高熱が続くが日内変動が1℃以上敗血症・細菌性心内膜炎・化膿性疾患
間歇熱(かんけつねつ)発熱と平熱を繰り返すマラリア・ウイルス感染・結核
波状熱数日の発熱と解熱を繰り返すブルセラ症・ホジキンリンパ腫

また「手術後3日以内の発熱」は術後炎症反応として生理的なことが多いですが、3日以降も続く発熱は肺炎・尿路感染・創部感染などを積極的に疑う必要があります。

みらいちゃん

みらいちゃん

熱型ってこんなに種類があるんですね!グラフを見る目が変わりそうです

しーちゃん

しーちゃん

そう!「ただ熱がある」じゃなくて、「どんなパターンで熱があるか」を観察して報告できると、医師からの信頼もぐっと上がるよ。日ごとのバイタルのトレンドを見る習慣をつけてみて

3.発熱時のクーリングは必要?【根拠から考える】

結論から言うと、アイスノンや氷嚢による一般的なクーリングはあまり推奨されません。

「表在の大きな動脈(腋窩・鼠径・頸部)を冷やすと体温が下がる」と教わることがありますが、この効果は科学的根拠が不明瞭です。解熱という意味での有効性は期待できません。

なぜクーリングは推奨されないのか?

  • 解熱効果が期待できない:発熱は脳の視床下部がセットポイントを上げた結果。皮膚を外から冷やしても視床下部のセットポイントは変わらない
  • シバリング(悪寒戦慄)を悪化させることがある:寒いのに冷やされると、体はさらに熱を産生しようとしてシバリングが起き、苦痛が増す
  • 体力を消耗させる:不快感や筋収縮(シバリング)により、患者さんの体力が奪われる

⚠️ 特に注意!
悪寒・シバリングがある状態でのクーリングは患者さんにとって苦痛であり、むしろ保温が必要です。バイタルサインや患者さんの訴えを確認してから対応を判断しましょう。

クーリングが有効なケース

  • 患者さんが「暑くて不快」と訴えている場合:苦痛の緩和として患者さんが希望するなら渡す(解熱目的ではなく快適性のため)
  • 打撲・打ち身など局所の炎症がある場合:創部の炎症を抑えるための局所クーリングは有効
  • 熱中症などの体温異常上昇:感染による発熱ではない場合は体表冷却が必要なケースもある
しーちゃん

しーちゃん

「なんで熱が出てるのに冷やさないの!?」と言われることもあるかもしれない。でも根拠を持って説明できることが大事。患者さんに不利益がない範囲で、丁寧にコミュニケーションとりながら対応しよう

発熱時に本当に必要なケア

  • 水分補給:発熱により不感蒸泄が増加。脱水予防のため水分摂取・輸液の確認
  • 解熱薬の投与:医師の指示に従いアセトアミノフェン・NSAIDsなど適切な薬剤を使用
  • 安楽な体位・環境調整:室温調整・寝具の調整・着替えのサポート
  • 口腔ケア:発熱中は口腔内が乾燥しやすく、感染リスクも上がる
  • 皮膚ケア:発汗による皮膚トラブルを防ぐための清拭・更衣

4.皮膚の状態を観察しよう

全身の皮膚観察は「急変を未然に防ぐ」ために非常に重要です。衣類や寝具の下を確認し、足の先まで丁寧に観察する習慣をつけましょう。

断りを入れてから布団を外して確認することが望ましいです。「皮膚の状態を確認させてください」と一声かけるだけで患者さんの信頼感が高まります。

4-1. 外傷・褥瘡・MDRPUの確認

まず外傷がないかを全身で確認します。

  • 褥瘡(床ずれ):仙骨部・踵部・後頭部・肩甲骨部など骨突出部に注意
  • MDRPU(医療関連機器圧迫創傷):酸素マスク・血圧計カフ・シーネ・尿道カテーテルなど医療機器による圧迫創
  • 外傷(打撲・裂傷):転倒・転落によるものが多い。患者さんが自分から言わないことも多い
しーちゃん

しーちゃん

「さっき棚の物を取ろうとしてふらついて頭をぶっちゃったんだよ〜」って、さらっと話してくれることがある。会話の中の”ちょっとおかしいな”に気づくことが大事。私は辻褄が合わないと感じたら、丁寧にコミュニケーションを取るようにしているよ

特に認知機能が低下している患者さんや、コミュニケーションが取りにくい患者さんは、自分から訴えないことが多いため、観察者が能動的に確認することが重要です。

4-2. 紅斑(こうはん)の確認

紅斑とは、皮膚が赤くなった状態です。表皮の毛細血管が拡張することで起こります。

  • 感染症:発熱に伴う皮膚の発赤、蜂窩織炎(ほうかしきえん)による局所の赤みと熱感
  • アレルギー反応:薬疹・じんましん・アナフィラキシーの初期サイン
  • 接触性皮膚炎:テープ・消毒薬・医療材料による皮膚炎
  • 褥瘡前駆症状:発赤が持続する場合はステージ1褥瘡に進行している可能性

「普段はないのに皮膚が赤い」と気づいたら、範囲・色調・境界・熱感・かゆみの有無を詳細に観察し報告しましょう。

みらいちゃん

みらいちゃん

薬疹って投与を始めてすぐじゃなくて、数日後に出ることもあるんですよね?

しーちゃん

しーちゃん

そう!特に抗菌薬や抗てんかん薬は投与開始から数日〜2週間後に出ることがある。「新しい薬を始めた」「最近投与量が変わった」という情報と皮膚の変化を結びつけて考えることが大事だよ

4-3. 点状出血と紫斑

点状出血は表皮に近い毛細血管が破れることで起こる、直径2〜3mm以下の赤紫色の点の集まりです。紫斑はそれより範囲が広いものを指します。

所見特徴考えられる原因
点状出血(紫斑点)2〜3mm以下の赤紫色の点血小板減少・凝固異常・血管炎
紫斑範囲が広い赤紫色の斑外傷・血小板減少・ITP・ステロイド長期使用
内出血(皮下血腫)青紫色の盛り上がり外傷・抗凝固薬の影響

抗凝固薬(ワーファリン・DOACなど)を服用している患者さんでは特に注意が必要です。転倒による内出血が広がりやすく、頭部への打撲は脳内出血につながるリスクがあります。

4-4. 浮腫(むくみ)の観察

浮腫は皮下組織に余分な水分が貯留した状態です。急変のサインとして非常に重要な所見です。

  • 下腿・足背から始まる浮腫:心不全・低アルブミン血症・静脈還流障害など
  • 急速に進行する浮腫:心不全の急性増悪や腎不全の悪化を示すことがある
  • 片側性の浮腫:深部静脈血栓症(DVT)の可能性を考える
  • 浮腫の評価法:脛骨前面を親指で5秒間押して、凹みが残るかどうか(pitting edema)を確認

💧 浮腫のグレード評価(+1〜+4)
+1:軽度(すぐ戻る)
+2:中等度(15秒で戻る)
+3:重度(30秒で戻る)
+4:非常に重度(1分以上残る)

毎回同じ部位・同じ方法で評価し、変化を記録することが重要!

4-5. チアノーゼ・皮膚色の変化

チアノーゼとは皮膚や粘膜が青紫色になる状態で、血中の還元ヘモグロビン増加により起こります。酸素化の低下や循環不全の重要なサインです。

  • 中枢性チアノーゼ:口唇・舌など中心部に出現。呼吸不全・先天性心疾患など
  • 末梢性チアノーゼ:指先・爪床・耳朶に出現。末梢循環不全・低体温など

また皮膚の黄染(黄疸)は、ビリルビンの上昇を示す重要な所見です。眼球結膜(白目の部分)が黄色くなるのが最初に気づきやすいサインです。肝疾患・胆道閉塞・溶血性貧血などが原因となります。

みらいちゃん

みらいちゃん

チアノーゼって SpO2 が低下する前に皮膚で気づけることもあるんですね!

しーちゃん

しーちゃん

そう!SpO2モニターは重要だけど、実際に患者さんの皮膚・口唇・爪の色を直接見ることも同じくらい大事。モニターだけに頼らずに、自分の目で観察することを忘れないで。皮膚の色の変化はモニターより早く気づけることもあるよ

4-6. 皮膚ツルゴール(脱水の評価)

皮膚ツルゴールとは皮膚の張り(弾力)のことです。脱水状態を評価する簡便な方法として活用できます。

確認方法:手背や前腕の皮膚をつまんで放し、元に戻る速さを見ます。通常は2秒以内に戻りますが、脱水では3秒以上かかることがあります。

  • 陽性(脱水を示す):皮膚がゆっくり戻る、テント状(つまんだ形が残る)
  • 注意点:高齢者は皮膚の弾力が低下しているため、もともとツルゴール低下が見られることがある
  • 他の脱水サイン:口腔粘膜乾燥・眼球陥没・腋窩乾燥・尿量減少と組み合わせて評価する
しーちゃん

しーちゃん

ツルゴールは確認が簡単なわりに情報量が多い!点滴が入っていない経口摂取だけの患者さんや、下痢・嘔吐が続く患者さんでは必ず確認する習慣をつけておこうね

4-7. 発汗の観察

発汗の状態も皮膚観察の重要な項目です。

発汗の種類・状態考えられる状態
冷汗(つめたいあせ)ショック・低血糖・心筋梗塞・強い痛みなど
多量発汗(温かい汗)発熱の解熱期・代謝亢進・甲状腺機能亢進症
夜間発汗(寝汗)結核・リンパ腫・HIV感染・更年期障害など
発汗なし(無汗)脱水・末梢神経障害・薬の影響(抗コリン薬など)

特に冷汗はショックの初期サインである可能性があり、他のバイタルサインと合わせて緊急性を判断する必要があります。「患者さんの額を触ると汗でびっしょり」というのは、見た目より深刻な状態のことがあります。

臨床で使える!全身観察を素早くこなすコツ

フィジカルアセスメントの知識があっても、忙しい臨床では「どこから手をつければいいか」迷うことがあります。ここでは素早く・漏れなく全身観察するための実践的なコツをお伝えします。

「ながら観察」を身につけよう

体温測定・バイタル確認・清拭・配薬など、毎回の患者さんとの接触時間を「観察のチャンス」として活用しましょう。

  • 体温測定のとき:皮膚色・浮腫・発汗・皮膚ツルゴールを確認
  • 聴診のとき:呼吸数・胸郭の動き・皮膚状態を同時確認
  • 清拭・更衣のとき:全身の皮膚(褥瘡・紅斑・外傷)を確認
  • 点滴確認のとき:挿入部の発赤・腫脹・固定具による圧迫創を確認
  • 会話しながら:言葉の途切れ・表情・呼吸のしやすさを確認
しーちゃん

しーちゃん

「専用の観察時間」を作ろうとすると忙しいときにできない。でも「やりながら見る」癖をつけると、自然と全身観察が完成していくよ。最初は意識しないとできないけど、慣れると勝手に目が行くようになる

観察した内容を「変化」として記録する

観察結果の記録で大切なのは、「前回からの変化」を必ず書くことです。

記録のNG例記録のOK例
「下腿浮腫あり」「昨日と比較し下腿浮腫が増悪。左右ともpitting edema +2→+3に変化」
「発熱あり」「昨日まで36.5℃→本日38.2℃に上昇。3日前から継続する発熱」
「仙骨部に発赤あり」「仙骨部に新規発赤出現。直径約2cm、熱感あり、圧迫解除後も消褪せず」

変化を言語化できると、申し送りも的確になり、次の担当者が的確に引き継げます。医師への報告でも「変化している」という情報が迅速な対応につながります。

異常を見つけた時の「第一報」の型

何か異常を発見した時、どう報告すればいいか迷う人も多いはず。SBARを使った基本の型を覚えておきましょう。

📞 異常発見時のSBAR報告例(皮膚異常の場合)

S(状況):「○○さんの仙骨部に新しい発赤を発見しました」
B(背景):「昨日の観察時にはなく、本日の清拭時に気づきました。術後3日目で臥床が多い患者さんです」
A(評価):「褥瘡ステージ1または MDRPUの可能性があると思います」
R(提案):「体位変換の頻度を増やし、皮膚科・創傷ケアチームへのコンサルを検討していただけますか?」

みらいちゃん

みらいちゃん

SBARって申し送りだけじゃなくて、異常発見の報告でも使えるんですね!

しーちゃん

しーちゃん

そう!SBARは「情報を整理して伝える」すべての場面で使えるフレームワーク。最初は型通りに練習して、慣れたら自然に口から出るようになるよ。報告が上手になると、医師や先輩からの信頼がぐっと上がるから続けて練習してみてね

新人看護師が全身観察で陥りがちな落とし穴

  • 数値しか見ない:「SpO2 95%→OK」で終わり。呼吸数・呼吸音・皮膚色も合わせて確認する
  • 「変化なし」の確認を怠る:変化がないことを確認することも観察のひとつ
  • 患者さんが「大丈夫」と言ったら終わり:主観的情報と客観的情報(実際の観察所見)の両方を確認する
  • 足・背部の観察を省略する:骨突出部・医療機器が当たっている部位は意識しないと見落としやすい
  • 一人で判断しようとする:「これは報告すべきか迷う」と思ったらまず報告。迷ったら報告が鉄則

5.しーちゃんが経験した症例

80歳台・男性・心不全による入院3日目

後輩看護師から声をかけられました。

みらいちゃん

みらいちゃん

SpO2がちょっと低いんですよね〜。深呼吸すれば94%まで上がるんで大丈夫だとは思いますが、気になって…

「気になった」という直感は大事なサイン。私はベッドサイドまで行き、患者さんに声をかけました。

しーちゃん

しーちゃん

Aさん、調子どうですか〜?

患者さん:「だいじょう、、、ぶだと思います、、、よ」

しーちゃん

しーちゃん

(あれ?会話の中で言葉が切れている。言葉の途中で呼吸が入っているかも。)ABCDEの順番で観察してみよう。

観察の結果:

観察項目所見
呼吸数(B)28回/分(頻呼吸!)
体温(E)38.5℃(要注意レベルの発熱)
聴診(B)断続性のラ音あり(捻髪音・水泡音)
SpO2(C)深呼吸で94%まで上がるが、安静時は低め
しーちゃん

しーちゃん

肺炎を併発したかもしれない!SpO2は今はギリギリでも、このまま放置すると酸素化が維持できなくなる。すぐ医師に報告して検査・治療が必要だ!

すぐに医師に報告し、以下の対応が開始となりました:

  • 血液培養×2セット採取
  • 痰培養採取
  • 胸部レントゲン撮影
  • 抗菌薬投与開始
  • 酸素投与開始

後輩看護師の「気になった」という直感を活かし、ABCDEで系統的に観察したことで早期発見・早期対応ができた症例です。

📝 この症例から学ぶこと
① SpO2だけを見て「大丈夫」と判断しない
② 「言葉が切れる=呼吸が苦しい」サインを会話から読み取る
③ 体温38.5℃+呼吸数28回+ラ音 → 肺炎の可能性を素早く判断
④ 培養検査は抗菌薬投与前に採取することを予測して準備する

みらいちゃん

みらいちゃん

「深呼吸すれば上がる」って後輩看護師は安心していたけど、それだけで判断しちゃいけないんですね

しーちゃん

しーちゃん

そう。一つの数値だけで判断せず、複数のサインを組み合わせてアセスメントすることが急変防止につながるよ。この症例では呼吸数と体温と聴診が全部異常だったから、早めに動けた。今日学んだ「E:全身評価」の体温観察が直接役立った例だよ

6.よくある疑問Q&A【しーちゃんが答えます!】

Q1. 患者さんの体温が37.4℃でした。これは報告が必要ですか?

しーちゃん

しーちゃん

37.4℃は私の基準だと「観察継続」の範囲。でも「昨日まで36.5℃だったのに今日は37.4℃」なら変化として捉えて、数時間後の再検温を計画するよ。数値そのものより「変化しているかどうか」が重要!

Q2. クーリングをしないと患者さんや家族に怒られることがあります

しーちゃん

しーちゃん

わかる!「なんで冷やさないの?」って言われること、あると思う。そのときは「今は体が熱を作ろうとして悪寒がある状態なので、冷やすとかえって苦しくなってしまいます。まずお薬で対応させてください」と説明してみて。根拠を持って、でも穏やかに伝えることが大事だよ。どうしても希望される場合は、不利益のない範囲で対応しながら経過を見よう

Q3. 褥瘡とMDRPUの違いがわかりません

しーちゃん

しーちゃん

褥瘡は「骨突出部+体重による圧迫」で起こる創傷。MDRPUは「医療機器(酸素マスク・シーネ・カテーテルなど)による圧迫」で起こる創傷。原因が「体重」か「医療機器」かの違いだよ。でも対策は共通で、定期的な除圧・観察・正しい固定が大切

Q4. チアノーゼと末梢冷感の違いは?

しーちゃん

しーちゃん

チアノーゼは血中の還元ヘモグロビンが増えて「皮膚・粘膜が青紫色になる」状態。末梢冷感は「皮膚温が低下している」状態。両方同時に起きることも多いけど、チアノーゼは酸素化・チアノーゼを起こさない程度に浅い低酸素でも末梢冷感は出るよ。口唇の色と指先の温度、両方確認する習慣をつけよう

Q5. 皮膚観察はどのくらいの頻度でやればいい?

しーちゃん

しーちゃん

入院患者さんなら最低でも1日1回は全身の皮膚観察を!ハイリスク患者(高齢・低栄養・スキンテア歴あり・褥瘡既往など)はさらに頻繁に。バイタル測定のついでに皮膚もさっと確認する習慣をつけると、大きな問題を早期に発見できるよ

Q6. 紅斑を発見した時、何を報告すればいいですか?

紅斑発見時の報告に含めるべき情報:

  • 出現時期:いつから?前回観察時にはなかったか?
  • 部位と範囲:どこに?どのくらいの大きさか?
  • 色調・性状:鮮紅色か暗赤色か?境界は明瞭か?盛り上がりがあるか?
  • 随伴症状:痒み・痛み・熱感の有無
  • 最近の薬剤変更:新規薬剤開始・増量があったか?
しーちゃん

しーちゃん

SBARに当てはめて報告するとスムーズ。「○○さんの背部に新しい発赤を発見しました(S)。今日の入浴ケア時に気づきました(B)。薬疹またはアレルギー反応の可能性があります(A)。診察をお願いできますか(R)」という感じで伝えると先生にも伝わりやすいよ

フィジカルアセスメントを「習慣」にするために

フィジカルアセスメントは、知識として知っているだけでは意味がありません。臨床で毎日実践して、はじめて本当のスキルになります。

最初の1ヶ月の目標設定

  1. 1週目:ABCDEの各文字が何を指すか、頭にたたき込む。体温測定時に必ず「前回値と比較する」習慣をつける
  2. 2週目:受け持ち患者さん全員の皮膚観察を申し送り前に確認する
  3. 3週目:発熱患者が出たら、TOP3(肺炎・尿路感染・腸炎)を意識して報告する
  4. 4週目:一人の患者さんでABCDEを通して観察し、アセスメントを記録してみる

先輩・認定看護師への相談を活用しよう

「この患者さんの皮膚がいつもと違う気がするけど、これは報告すべき?」という迷いは、成長の証拠です。一人で抱え込まず、認定看護師・皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)・先輩スタッフへ相談する習慣をつけましょう。

  • 皮膚トラブル・褥瘡:WOCNや皮膚科に相談
  • 急変の予兆が疑われる:RRSチーム(院内急変対応チーム)・リーダー看護師に相談
  • アセスメントが合っているか自信がない:プリセプター・先輩・認定看護師に確認

一人で完璧にやろうとしなくていい。チームで患者さんを守るのが看護の強みです。

💙 しーちゃんからの最後のメッセージ
「体温が高い」「皮膚が赤い」「なんか変」という気づきは、あなたの直感であり観察力の証。その直感を大切にして、今日学んだ知識と結びつけることで、急変を未然に防ぐ看護師へと成長していきます。毎日の小さな観察の積み重ねが、患者さんの命を守ることにつながっています。一緒に頑張ろう!

全身観察に役立つ!おすすめの勉強法

フィジカルアセスメントの知識をさらに深めたい方に、しーちゃんがおすすめする学習方法をご紹介します。

実践と振り返りが最速の上達法

教科書を読むだけでなく、「今日見た患者さんで、何か一つアセスメントを深める」ことを意識してみてください。たとえば:

  • 「今日の患者さんの浮腫は昨日より増悪していた。原因は何だろう?」と考えてカルテを見直す
  • 「発熱した患者さんに何の培養が指示されたか」を記録しておく
  • 「この皮膚の発赤は何が原因か」を先輩や医師に確認して学ぶ

一日に一つでいい。「今日何かを学んだ」と思える積み重ねが、半年後・1年後に大きな力になります。

このシリーズブログを最初から復習しよう

フィジカルアセスメントのABCDE各項目を解説したブログシリーズを公開しています。このEの記事で全てが揃いました。ぜひA〜Dも読み返して、全体像を整理してみてください。

系統的なフィジカルアセスメントが身につけば、急変の予測・早期発見・適切な報告という三つの力が一気に高まります。患者さんにとって安全で質の高い看護が提供できる看護師を目指して、一緒に頑張りましょう!

みらいちゃん

みらいちゃん

ABCDEシリーズ全部読んで、今度は実際に使ってみます!

しーちゃん

しーちゃん

ぜひ!わからないことがあればこのブログでまた確認してね。実際に使いながら疑問が出てきたときに読み返すと、さらに理解が深まるよ😊

7.まとめ:全身観察チェックリスト

今回は「E:全身評価」として、体温・皮膚の観察について解説しました。

全身評価チェックリスト(毎勤務で確認!)

【体温】
□ 体温を測定した(前回値と比較した)
□ 38℃以上の場合は原因を考えて報告した
□ シバリングがある患者にクーリングしていないか確認した

【皮膚】
□ 骨突出部(仙骨・踵)の皮膚を確認した
□ 医療機器が当たっている部位(MDRPUリスク)を確認した
□ 紅斑・発疹・新しい傷がないか確認した
□ 浮腫の変化(増悪・改善)を評価した
□ 口唇・爪のチアノーゼ・皮膚色の変化を確認した
□ 眼球結膜の黄染を確認した(肝疾患リスク患者)

このシリーズで学んだABCDEアプローチの全体像

項目今日の観察急変のサイン
A:気道気道開通・狭窄音いびき音・気道閉塞
B:呼吸呼吸数・深さ・音頻呼吸・ラ音・SpO2低下
C:循環血圧・脈拍・末梢血圧低下・頻脈・冷汗
D:意識GCS・瞳孔・麻痺意識レベル低下・瞳孔不同
E:全身体温・皮膚・全体発熱・チアノーゼ・浮腫増悪
みらいちゃん

みらいちゃん

ABCDEの全部を通して学べて、観察の全体像がやっとつながってきた気がします!

しーちゃん

しーちゃん

フィジカルアセスメントは一度覚えたら終わりじゃなくて、実際に臨床で使いながらどんどん精度を上げていくもの。今日学んだことを明日の勤務でひとつでも実践してみてね!体温を測るときに「前回との比較」をするだけでも、立派な一歩だよ

思いがけない皮膚トラブル(「実は転倒して怪我していた」)もあります。患者さんの皮膚確認を必ず行い、急変を未然に防ぐ観察を続けていきましょう。

以上、しーちゃんでした!最後まで読んでいただきありがとうございます!

この記事が少しでもあなたの看護の力になれたなら幸いです⭐️

これからも、少しずつ学んで成長していきましょう⭐️

これから経験を積む看護師さんの伴走者
看護の考えでポジティブな人生の送り方を支援する
きゃりあサポートラボナース

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