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「脳梗塞の患者さん、何を観察すればいいの?」
「JCS?GCS?MMT?スケールが多すぎて混乱する…」
「麻痺が悪化してるかどうかなんて、私に分かるのかな」
脳梗塞は、その病名での入院も、既往歴として持っている患者さんも、とても多い疾患。新人看護師なら必ず出会います。でも安心してください。脳梗塞の情報収集で一番大事なのは、たった一点——「前の勤務から、悪化のような変化が起きていないか」。この記事では、その見方を現役ナースがやさしく解説します。

しーちゃん、脳梗塞の患者さんを受け持つんですけど…正直、脳のことって難しくて。意識レベルとか麻痺とか、どこまで分かってないといけないんでしょうか?

最初に告白するね。私も、脳の疾患の理解はすごく苦手。たぶん看護師でも、苦手な人の方が多いんじゃないかな。

えっ、しーちゃんでも苦手なんですか!?

うん。でもね、苦手でも大丈夫な理由があるの。脳梗塞の情報収集は、難しい病態を全部理解することじゃなくて——「前の勤務から変わっていないか」の一点に集中することだから。今日はその見方を教えるね。
📌 この記事でわかること
- 脳梗塞の観察でいちばん大事な「一点」
- カルテのどこを見る?(JCS・GCS・瞳孔・MMT)
- 「もともとの障害」を把握する意味
- 喋れる患者さんへの直接の聞き方
- 見当識確認の「お得な小ネタ」
- 再発予防の視点(薬・血圧)と、情報収集が上手くなる最大のコツ
脳梗塞は「必ず出会う」疾患
脳梗塞は、その病名で入院してくる方も多いですし、既往歴に脳梗塞があるというパターンもすごく多い。つまり、どの病棟にいても必ず出会う疾患です。
そして、脳梗塞による入院で新人看護師が受け持つことが多いのは、運動障害(麻痺)のある患者さんではないかと思います。急性期の治療が一段落し、麻痺と付き合いながらリハビリを進めていく時期——ここからが、病棟看護師の出番です。
いちばん大事なのは「前の勤務から変化していないか」
脳梗塞の観察で一番大事なこと。それは、前の勤務から、悪化のような変化が起きていないかです。むしろ私は、この一点に集中する感じで見ています。
なぜか。脳梗塞は再発や進行(悪化)が起こり得る疾患だからです。「昨日は動いていた手が、今日は動きにくい」「昨日より反応が鈍い」——こうした変化は、脳で何かが起きているサインかもしれない。逆に言えば、変化がなければ、ひとまず安心して日々のケアを進められる。だから「変化の有無」が全ての起点なんです。

脳の解剖や病態を全部覚えるのは大変。でも「昨日と比べてどうか」なら、新人さんにも見られるでしょ?難しい知識より、まず比較。これが脳梗塞看護の入口だよ。

「変化がないか」の一点なら、私にもできそうです!でも…何と何を比べればいいんですか?
カルテのどこを見る?|比較の「ものさし」たち
「変化」を見るには、比較のものさしが要ります。カルテから拾うなら、主に次の項目です。
📊 脳梗塞の観察のものさし
- 意識レベル…JCS(ジャパン・コーマ・スケール)や GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)で記録されていることが多い
- 瞳孔…大きさ・左右差・対光反射
- 運動の状況(麻痺の状態)…MMT(徒手筋力テスト:0〜5で筋力を評価)で記録されることが多い
※スケールの読み方を全部暗記しなくてOK。「前回の記録の数値・表現」と「今回」を並べて、変わっていないかを見るのが目的です。
たとえばMMTなら、「右上肢3」と書かれていたものが「2」になっていたら筋力低下=悪化のサインかもしれません。JCSやGCSも同じで、数値そのものより「前回との差」に注目しましょう。

スケールは「翻訳機」みたいなもの。先輩たちの観察が数字で残ってるから、あなたはそれと今日を比べればいい。先人の記録を使わせてもらおう。
「もともとの障害」を把握することが、比較の土台
麻痺のほかにも、脳梗塞では視野障害(見える範囲が欠ける)や、言葉の障害などが出ることがあります。ここで大事なのは——もともとその患者さんが患っている障害を把握しておくこと。
「左に麻痺がある」「左側が見えにくい」「少し呂律が回りにくい」——それがその人のベースライン(いつもの状態)です。ベースラインを知らなければ、「今日の呂律の回りにくさ」が、いつも通りなのか悪化なのか、判断できません。変化を見る前に、まず「その人のいつも」を知る。これが情報収集の土台です。
喋れる患者さんには、直接聞くのが一番
そして、カルテだけに頼らなくていいんです。喋れる患者さんであれば、直接聞けます。
🗣 直接聞く・見せてもらう例
- 「足の上がり具合、どうですか?」(実際に上げてもらう)
- 「目の見え方、どうですか?」
- 「喋りづらさは、どうですか?」
正直に言うと、こうした細かな状態をカルテから全部集めるのは大変ですし、そもそも全部は載っていません。本人に聞いて、動かしてもらって、あなたの目で見る——それが一番確実で、一番早いんです。

「昨日より上がりますね」「昨日と同じくらいですね」って、患者さんと一緒に確認する感じでいいの。会話しながらの観察は、患者さんの安心にもつながるよ。
症状が不安定な患者さんは「一緒に確認」が理想。でも…
脳梗塞の症状が出たり消えたりするケースや、悪化しつつある不安定な患者さんの場合は、申し送りのタイミングで前勤務者と一緒にベッドサイドで麻痺の具合を確認するのが理想です。ふたりで同じものを見れば、「変化」の判断がブレません。
……とはいえ、新人看護師さんが先輩に「一緒に見てください」と言うのは、正直ハードルが高いですよね。そんなときは、不安定な患者さんであることをリーダーやペアの先輩に伝えておくだけでも違います。「◯◯さん、症状が変動しているようなので、変化があったらすぐ相談させてください」——この一言が、あなたの保険になります。

「一緒に見てください」は言えなくても、「変化があったら相談します」なら言えそうです!
「どんなことを喋っていたか」も大事な情報
カルテからは、観察項目の数値だけでなく、患者さんがどんなことを喋っていたかも確認しましょう。会話の内容は、意識や認知の状態を映す鏡だからです。
見当識確認の「お得な小ネタ」
見当識(今がいつで、ここがどこか分かっているか)を確認するとき、「お名前は?」とよく尋ねますよね。でも実は——「あなたの奥さまのお名前は何といいますか?」など、他人の名前を確認するという方法があるんです。
自分の名前は最後まで保たれやすい情報。それより一段深い「身近な他人の名前」が答えられるかどうかで、認知の状態がもう少し細かく見えてきます。現場で実践している先輩は少ないと思いますが、知識として知っているとお得ですよ。

「お名前は?」に答えられても、「奥さんのお名前は?」で詰まることがあるの。ちょっとした引き出しだけど、変化に気づくアンテナがひとつ増えるでしょ?
再発予防の視点|薬と血圧もセットで
脳梗塞の患者さんでは、再発予防の視点も持っておきましょう。押さえるのは2つだけ。
🔁 再発予防で見ること
抗凝固薬を飲んでいる患者さんは出血しやすいので、転倒にも注意。麻痺があって転びやすい×血が止まりにくい、という組み合わせは要警戒です。
情報収集が上手くなる最大のコツ|ナースコールに出る
最後に、脳梗塞に限らない話を。自分の勤務中に、自分の患者さんのナースコールに出る。ケアに一緒に入る。——こうして患者さんの「日常」を知ることが、情報収集を円滑にする最大の方法かもしれません。
カルテの記録は、しょせん誰かが切り取った一部。実際にコールに出て「ああ、この人はトイレのときこうやって動くんだ」「この程度の介助が要るんだ」と知れば、ADLも麻痺の程度も、体で分かります。
もちろん、新人のうちは余裕がないと思うので、無理にコールに出る必要はありません。でも、出たときは——対応した内容を頭に入れておく。それだけで、あなたの中の患者さん像がどんどん立体的になっていきます。

ナースコールって「業務の中断」に感じるかもしれないけど、実は「生きた情報収集のチャンス」でもあるの。出られたときだけでいい、そういう目で見てみて。

コール対応も情報収集…!「面倒」じゃなくて「チャンス」って思えたら、ちょっと楽しくなりそうです。
変化に気づいたときの報告例
「変化かも」と思ったときの報告は、比較の形で伝えるのがコツです。
🗣 報告の例
「◯号室の◯◯さんです。記録では昨日、右上肢のMMTが3でしたが、今は挙上がほとんどできず2程度に感じます。呂律も朝より回りにくい印象です。JCSは変わりありませんが、一緒に確認していただけますか。」
ポイントは3つ。①前回の記録の数値を引用する、②今の状態を並べる、③「一緒に確認してください」で締める。診断はあなたの仕事ではありません。「比較して、違う気がする」まで言えれば、100点の報告です。

脳の変化は時間勝負のこともあるから、「気のせいかな」で待たないで。空振りでもいいの。「一緒に見てください」が言える新人さんは、患者さんを守れる新人さんだよ。

空振りしてもいい…!「比較+一緒に確認」の型、これなら怖がらずに報告できます。
しーちゃんの本音|脳が苦手でも、大丈夫

最初に言ったとおり、私は脳の疾患の理解がすごく苦手。20年やってても、正直そうなの。そして、看護師には苦手な人の方が多いんじゃないかと思ってる。
だから、いきなり全部覚えようとしなくていい。JCSもMMTも、受け持つたびに少しずつ。「前と比べる」を繰り返すうちに、少しずつ少しずつ、情報収集は上手になっていくから。
上手になっていく自分を信じて、一歩ずつ歩いていこうね。

苦手でもいい、少しずつでいい…。しーちゃんがそう言ってくれると、本当に心が軽くなります。
よくある質問|脳梗塞の情報収集Q&A
Q. JCSとGCS、両方覚えないとダメですか?
A. まずは自分の病棟でよく使われている方から覚えれば大丈夫です。大事なのはスケールの暗記より「前回の記録と比べて変化がないか」を見ること。読み方は受け持つたびに少しずつ身につきます。
Q. 麻痺が悪化しているかも、と思ったら?
A. すぐに先輩・リーダーに報告してください。「昨日はMMT3だった右手が、今は2程度に感じます」のように、比較の形で伝えると伝わります。脳の変化は時間勝負のことがあるので、迷ったら早めが正解です。
Q. 意識レベルの確認で、失礼にならないか心配です。
A. 「確認させてくださいね」と一言添えれば大丈夫。名前や日付の質問は、患者さんによっては不快に感じることもあるので、会話の流れに自然に織り込む工夫を先輩の技から盗みましょう。
Q. 脳梗塞の病態が難しくて、勉強が進みません。
A. 焦らなくて大丈夫。まず「自分の受け持ち患者さんの障害」だけ調べる、を繰り返しましょう。教科書を頭から読むより、目の前の患者さんから学ぶ方が、ずっと頭に残ります。
まとめ|脳梗塞は「前勤務との比較」がすべての起点
✅ 脳梗塞の情報収集チェックリスト
- □ 最重要は「前の勤務から悪化のような変化がないか」の一点
- □ ものさしはJCS/GCS・瞳孔・MMT(麻痺)——数値より「前回との差」
- □ もともとの障害(麻痺・視野・言葉)=ベースラインを把握する
- □ 喋れる患者さんには直接聞く(足の上がり・見え方・喋りづらさ)
- □ 不安定な患者さんは「変化があったら相談します」と先輩に一言
- □ どんなことを喋っていたかも確認(見当識は「他人の名前」の小ネタも)
- □ 再発予防|抗血小板・抗凝固薬と血圧の指示、転倒注意
- □ ナースコール対応は「生きた情報収集」のチャンス(無理せず)
- □ 脳が苦手でもいい。少しずつ上手になる自分を信じる
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