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はじめにお読みください
特定行為は、看護師が自分の判断だけで行うものではありません。あらかじめ医師が作成した「手順書」で決められた範囲の中で、状態を確認しながら実施します。この記事は私自身の実践を振り返ったもので、手技を教えるマニュアルではありません。実際の対応は、必ず自施設の基準と医師の指示に従ってください。
※患者さんが特定されないよう、経過・背景・検査値は大幅に省略しています。
「もう確認済みって言われたのに、また見るの?」
「手術室から戻ってきた患者さん、何を見ればいいんだろう」
「申し送りを疑うみたいで、聞き直しにくい」
——確かめ直すのは、前の人を疑っているからではありません。人が動けば、物もずれるからです。
今回は、ほかの場所で挿管された患者さんを受け取って、チューブの位置を確認した症例です。読み終わるころには、患者さんを引き継いだときに何を見ればいいかが分かるはずです。

しーちゃん、今日ちょっとモヤっとしたことがあって。
手術室から戻ってきた患者さんで、先輩が全部もう一度確認してたんです。手術室でも確認してるはずなのに。

あー、それ見てて「疑ってるみたいだな」って思った?

……正直、ちょっと思いました。

分かる。私も新人のとき、そう思ってた。
でもね、あれは人を疑ってるんじゃなくて、時間と移動を疑ってるの。

時間と、移動……?

そう。確認した瞬間は正しかった。でも、そのあと運ばれてきたでしょ。
今日はそこの話をするね。私が実際に、よその場所で挿管された患者さんを受け取ったときの話。
📌 この記事でわかること
- 引き継いだあとに、もう一度確かめる理由
- 移動や体位でチューブがずれる仕組み
- 患者さんを受け取ったときに確認する4つ
- 「その人の固定の長さ」を覚えることの意味
- 引き継ぎのときに聞いておきたい一言
- 病棟でも同じことが起きる場面
- ①今回の場面|よその場所で挿管された患者さんを受け取る
- ②「そのあとに起きたこと」=患者さんは運ばれてきた
- ③受け取ったときに確認した4つ
- ④覚えるのは「一般的な数字」ではなく「その人の数字」
- ⑤ずれたときに何が起きるか(おさらい)
- ⑥引き継ぎのときに、聞いておきたいこと
- ⑦これ、病棟でもまったく同じことが起きます
- 補足①|そもそも、なぜ最初は「深く」入りやすいのか
- 補足②|レントゲンは、医師と一緒に見せてもらう
- 補足③|口腔ケアのときが、いちばんの確認チャンス
- ⑧そのあと、ずっと見ていくサイン
- ⑨新人さんが、引き継いだときに見るのはこれだけ
- そのまま使える|引き継ぎと報告の言い方
- よくある質問
- まとめ|確かめ直すのは、人を疑うことではない
- 🛒 しーちゃんのおすすめ情報
①今回の場面|よその場所で挿管された患者さんを受け取る
救急外来で気管挿管された患者さんが、ICUに入られました。すでに管が入った状態で、運ばれてきたところからのスタートです。
引き継いだ情報の中に、こんな一文がありました。
申し送られた内容
「レントゲンで深く入っていたので、数センチ浅くしました」
つまり、救急外来で一度調整されている。ちゃんと確認され、ちゃんと直されている。仕事としては完了しています。
それでも、ICUに入った時点でもう一度確認することになりました。

……せっかく直したのに、もう一回ですか?

そう。しかも「前の人が間違ってるかも」なんて、これっぽっちも思ってないよ。
救急外来の看護師も医師も、ちゃんと仕事してる。問題は、そのあとに起きたことなの。
②「そのあとに起きたこと」=患者さんは運ばれてきた
救急外来からICUまで、患者さんは移動しています。この移動のあいだに、いろんなことが起きます。
移動のあいだに起きること
- ストレッチャーやベッドへの乗せ替え(体が持ち上がり、ずれる)
- 枕の高さが変わり、首の角度が変わる
- エレベーターや段差での揺れ
- 回路や固定テープが引っぱられる
- 汗や分泌物でテープがゆるむ
とくに首の角度は大きく効きます。あごを引くとチューブは深くなり、あごを上げると浅くなる。頭の位置が変わるだけで、先端は数センチ動きます。
つまり救急外来での確認は「あのときは正しかった」という記録です。今も正しいかどうかは、別の話。

ここが分かると、確認の意味がガラッと変わるよ。
前の人の仕事を点検してるんじゃなくて、そのあとの時間を点検してるの。だから遠慮しなくていい。

……そういうことだったんですね。
聞き直すの、失礼かなってずっと思ってました。

ぜんぜん失礼じゃないよ。むしろ受け取った側がちゃんと見てくれると、送り出した側も安心するの。
私は逆の立場のとき、「見てくれてありがとう」って思うもん。
③受け取ったときに確認した4つ
実際に確認したのは、次の4つでした。
✅ 引き継いだときに確認する4つ
- □ ①口元の固定の長さ(今回は22cm。申し送りと合っているか)
- □ ②レントゲンで先端の位置(気管が左右に分かれる場所から2〜3cm手前にあるか)
- □ ③しぼんでいる肺がないか(無気肺。片方に入っていたサインになる)
- □ ④チューブの太さ(今回は7.5mm。記録して、以後の基準にする)
結果、先端は気管が分かれる場所から2〜3cm手前、しぼんでいる肺もなし。適切な位置にありました。
「異常なし」で終わった確認です。でも、この「異常なし」を自分の目で確かめたかどうかが、あとで効いてきます。

確認って、何も見つからないことのほうが多いんだよ。
でもね、「今、この位置にある」と自分で知っている状態と、「たぶん大丈夫のはず」は、まったく違う。ずれたときに気づけるかどうかが変わるから。
なお、この確認は手順書に定められた範囲の中でした。医師と一緒にレントゲンを見て、位置を確認しています。範囲かどうかを毎回確かめることも、手順のうちです。
④覚えるのは「一般的な数字」ではなく「その人の数字」
ここが今回いちばん伝えたいところです。
今回の患者さんはチューブの太さ7.5mm、口元22cm固定でした。
ところが、前回の記事で書いた患者さんは6.5mm、21cm固定です。
2人の比較
- Aさん:チューブ6.5mm/21cm固定
- Bさん:チューブ7.5mm/22cm固定
どちらも「気管が分かれる場所から2〜3cm手前」という同じ正解の位置。それでも口元の数字は違う。
体格が違えば、口から気管までの距離も違います。「大人はだいたい何cm」という覚え方は、目安にはなっても答えにはなりません。
だから覚えるのは、その人の数字です。

「22cmが正しい」じゃないの。「この人は22cm」なの。
この違いが分かると、申し送りの受け方が変わるよ。

……たしかに私、教科書の数字を覚えようとしてました。

それ、みんな通る道。私もそうだった。
でも現場で使えるのは目の前の人の数字だけ。教科書の平均値は、その人には一度も当てはまらないこともあるからね。
そして、その数字を知っているのは受け持っているあなただけです。医師は毎回レントゲンを見に来られません。22cmが23cmになったことに最初に気づけるのは、そばにいる看護師です。
⑤ずれたときに何が起きるか(おさらい)
念のため、位置がずれた場合を短くまとめておきます。
- 浅くなった:抜けるおそれ、声帯を傷める、空気が漏れて量が入らない
- 深くなった:片方の肺にだけ入る(片肺挿管)、もう片方がしぼむ
確認の方法や、それぞれの弱点についてはこの2記事にまとめています。今回は割愛します。
⑥引き継ぎのときに、聞いておきたいこと
受け取るときに、この3つを聞いておくと後がまったく違います。
①固定の長さ
「チューブは何cm固定でしょうか?」
②位置確認をした時点
「レントゲンでの位置確認は、いつの時点のものですか?」——移動の前か後かで意味が変わります。
③途中で調整があったか
「途中で深さを調整されたことはありますか?」——一度動かしているなら、それだけ注意して見る理由になります。
今回の症例は、まさに③に当たりました。「深かったので浅くした」という情報があったからこそ、受け取った側は念入りに見ることができました。

この3つ、遠慮せずに聞いていいよ。
聞かれて嫌がる人がいたら、それはその人の問題。患者さんの安全のために聞いてるんだから、あなたは何も悪くない。

……その一言、心強いです。
⑦これ、病棟でもまったく同じことが起きます
ここまでICUの話をしてきましたが、同じ状況は病棟でも毎日起きています。
「引き継いだあと」に当たる場面
- 手術室から病棟に戻ってきたとき
- CTやMRIなど、検査から戻ってきたとき
- 他の病棟から転棟してきたとき
- 入浴やリハビリのあと
- 体位変換やベッドアップのあと
- そして、夜勤から日勤に代わったとき
チューブに限りません。点滴のルート、ドレーン、胃管、酸素のチューブ。どれも「動いたあと」がいちばんずれます。
「さっき確認したから大丈夫」ではなく、動かしたら見る。この習慣ひとつで防げることが本当に多いです。

私の中で、看護のいちばん基本ってこれかもしれない。
動かしたら、見る。特別な知識も道具もいらないでしょう。1年目の今日からできることだよ。
補足①|そもそも、なぜ最初は「深く」入りやすいのか
今回の患者さんは、救急外来の時点で「深く入っていた」と申し送られていました。これは珍しいことではありません。
緊急で挿管する場面には、深くなりやすい事情がそろっています。
緊急の挿管で深くなりやすい理由
- とにかく確実に気管へ入れたい:浅くて抜けるより、深いほうがまだ安全。心理としては当然の判断
- 時間がない:ミリ単位の調整をしている場面ではない
- 体位が整っていない:ベッドではなく床、ストレッチャーの上ということもある
- 固定する余裕がない:まず入れて、落ち着いてから整える
つまり「深めに入っている」のは失敗ではなく、緊急時の合理的な結果であることが多い。だからこそ、落ち着いた場所に着いてから調整します。

救急の現場を責めるような読み方だけはしないでほしいの。
あの場では、それが正解だったんだよ。入れることと、整えることは、別の仕事。役割分担なの。

……受け取る側が整えるところまでが、セットなんですね。

そういうこと。バトンみたいなものかな。
走ってきた人を責めるんじゃなくて、次の区間をちゃんと走る。それだけ。
補足②|レントゲンは、医師と一緒に見せてもらう
今回、位置の確認は医師と一緒にレントゲンを見て行いました。ここも書いておきたいところです。
特定行為研修を修了していても、レントゲン1枚を自分だけで判断して終わり、にはしません。とくに位置の評価は、見る人によって解釈が分かれることがあります。
そして、これは1年目のあなたにこそすすめたいことです。
「一緒に見せてください」と言っていい
「先生、チューブの位置、一緒に見せてもらってもいいですか」
読めなくて構いません。「どこを見ているんですか」と聞けば、たいていの医師は教えてくれます。1回でも見せてもらうと、次から画面の見え方が変わります。

レントゲンって「読めるようになってから見るもの」だと思われがちなんだけど、逆なんだよ。
見ているうちに読めるようになるの。だから、読めないうちから見にいっていい。

読めないのに見に行っていいんですか……?

いいの。というより、読める人だって最初は読めなかったんだから。
私も何百枚も「よく分かんないな」って見てきたよ。ある日ふっと、あ、これかって分かる日が来る。
補足③|口腔ケアのときが、いちばんの確認チャンス
新人さんが挿管中の患者さんに毎日いちばん近づくのは、たぶん口腔ケアの時間です。
実はここが、いちばんずれやすく、いちばん気づきやすい場面でもあります。
口腔ケアのときに一緒に見るもの
- 固定の長さ(口角のどこに目盛りが来ているか)
- 固定テープの状態(唾液で浮いていないか、皮膚が赤くなっていないか)
- チューブが片側に寄っていないか(口角に食い込むと皮膚が傷む)
- ケアの前と後で、長さが変わっていないか
口の中を触れば、チューブは必ず動きます。だからこそケアの前と後で数字を見る。これだけで、自分が動かしてしまった分に気づけます。

「自分がずらしちゃったかも」って怖くて言えない子、けっこういるの。
でもね、ケアで多少動くのは当たり前。大事なのは、動いたことに気づいて言えるかどうか。黙ってるほうが何倍も怖いよ。

……それ、言えなくなりそうな気持ち、すごく分かります。

分かるよ。でも「ケアのあと、22が23になってます」って言える人は、私はすごく信頼する。
ミスを隠さない人が、いちばん安全な人だから。
⑧そのあと、ずっと見ていくサイン
確認して終わりではありません。ここから見続けるものがあります。
ずれたときに出るサイン
- 固定の長さが変わっている(22cmだったのに23cm)
- 声が漏れる(挿管中に声や息の漏れる音がしたら異常)
- 人工呼吸器の換気量低下・気道内圧低下のアラーム
- EtCO2の急な低下
- 胸の上がりの左右差
この中で、あなたが最初に気づける可能性が高いのは1つめと2つめです。どちらも機械ではなく、人が見て気づくものだからです。

アラームが鳴ってからじゃ遅いこともあるの。
数字が動く前に、見た目が変わってることがあるから。だから人を見るんだよ。
⑨新人さんが、引き継いだときに見るのはこれだけ
全部は無理です。まずここからで十分です。
✅ 挿管中の患者さんを引き継いだら
- □ 固定の長さを自分の目で見て、記録する(何cmか)
- □ 胸が上がっているか、左右差がないか
- □ SpO2が下がっていないか
そして移動や体位変換のあとに——
□ もう一度、固定の長さを見る
固定の長さは、道具も知識もいらず、数秒で見られて、しかも一番確実な情報です。1年目のあなたが今日からできて、しかもベテランと同じ精度で見られる、数少ないもののひとつです。

「何もできなかった」って落ち込む日があると思う。
でもね、固定の長さを見て記録した。それだけで、その勤務であなたは患者さんを守ってるよ。私が保証する。
そのまま使える|引き継ぎと報告の言い方
①受け取るとき(聞く)
「チューブは何cm固定ですか?レントゲンでの位置確認はいつの時点のものでしょうか?」
②引き継いだあとに確認できたとき(伝える)
「△△さん、受け取り時に確認して、22cm固定のままでした。胸の上がりも左右差ありません。」
③ずれが疑われるとき
「△△さん、申し送りでは22cm固定でしたが、今24cmになっています。検査から戻ったあとです。胸の上がりは左のほうが小さい気がします。見てもらえますか。」
③のように「前の数字」「今の数字」「その間に何があったか」の3つをそろえると、聞いた側はすぐ原因の見当がつきます。
よくある質問
Q. 前の人が確認しているのに、また確認するのは失礼ではありませんか?
A. 失礼ではありません。確かめ直しているのは前の人の仕事ではなく、そのあとに経過した時間と移動です。送り出した側も、受け取った側が見てくれることを期待しています。
Q. 固定の長さは、大人なら何cmが正しいのですか?
A. 決まった正解はありません。体格によって変わります。同じ「適切な位置」でも、ある方は21cm、別の方は22cmです。覚えるのは平均値ではなく、その患者さんの数字です。
Q. 移動しただけで、本当にずれるものですか?
A. ずれます。とくに首の角度の影響が大きく、あごを引けば深く、あごを上げれば浅くなります。乗せ替えや枕の変更でも起こります。
Q. 固定の長さが変わっていたら、自分で戻していいですか?
A. いいえ。気づいて報告するところまでがあなたの役割です。位置の調整は、医師または手順書に基づいて研修を修了した看護師が行います。
Q. 何もずれていなかったら、確認した意味はないのでは?
A. 大いにあります。「今この位置にある」と自分で知っている状態になるからです。ずれたときに気づけるのは、正常な状態を知っている人だけです。
まとめ|確かめ直すのは、人を疑うことではない
✅ 今日のふりかえりチェックリスト
- □ 前の人の確認は「あのとき正しかった」という記録
- □ そのあと患者さんは移動している
- □ 乗せ替え・首の角度・揺れ・テープのゆるみでずれる
- □ あごを引くと深く、あごを上げると浅くなる
- □ 引き継いだら 固定の長さ・レントゲン・無気肺・チューブの太さ を確認
- □ 覚えるのは平均値ではなくその人の数字
- □ ずれに最初に気づけるのは、そばにいる看護師
- □ 引き継ぎでは「何cm固定か」「位置確認はいつの時点か」「調整はあったか」を聞く
- □ 手術室・検査・転棟・入浴・体位変換のあとも同じ
- □ チューブ以外(点滴・ドレーン・胃管)も動いたあとがいちばんずれる
- □ ずれても自分で戻さない。気づいて報告するまでが役割
- □ 異常がなかった確認にも意味がある
- □ 動かしたら、見る

今日いちばん伝えたかったのは、確かめ直すのは人を疑うことじゃないってこと。
時間が経って、体が動いたから、もう一度見る。それだけ。だから遠慮しなくていいし、聞き直していいんだよ。

はい。今日ずっと「先輩は疑ってるのかな」って思ってたのが、恥ずかしくなりました。
明日から、受け持ちさんの固定の長さ、自分の目で見て記録します。ありがとうございます、しーちゃん!
💬 気管挿管や呼吸管理で、わからないことはありますか?
「この場面ではどうすればいい?」「ここが分からなかった」——どんな小さな疑問でも大歓迎です。私に答えられることなら、記事にできたらいいなと思っています(お名前や勤務先が分かる情報は書かないでくださいね)。
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