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はじめにお読みください
この記事は、私自身が経験した出来事をまとめたものです。お腹の症状には、さまざまな原因があります。とくに血便は、放置してよいものではありません。同じような症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください。この記事は診断や治療の代わりにはなりません。
「便が何日出ていないか、思い出せない」
「水を飲む時間なんて、なかった」
「休んだら、サボっていると思われる気がする」
——どれかひとつでも当てはまったら、この記事を読んでほしいです。
私は看護師8年目に、虚血性腸炎で入院しました。夜中の救急外来に、家族に連れられて行きました。原因は、特別なことではありません。便秘・脱水・睡眠不足・ストレス。全部そろっていました。

しーちゃん、この前の下痢と便秘の話、すごく分かりました。私も気をつけます。

うん。でもね、あの続きがあるの。……あんまり話したくない話なんだけど。

続き、ですか?

私、8年目のときに救急車みたいな勢いで病院に運ばれてる。血便が出て、そのまま入院した。——新人のころの話じゃないよ。8年目。それでも、こうなるの。
📌 この記事でわかること
- ベテランでも体を壊す。むしろ「ちゃんとやらなきゃ」が危ないということ
- 便秘・脱水・睡眠不足がそろうと何が起きるのか
- 虚血性腸炎という病気と、なぜ便秘が引き金になるのか
- 「若いから大丈夫」が通用しない理由
- 1年目のうちに身につけてほしい5つの習慣
- 迷わず受診すべき症状
①これは、新人のころの話ではありません
先に断っておきます。この記事の出来事が起きたのは、私が看護師8年目のときです。
新人でもなく、慣れていないわけでもなく、認定看護師として周りから頼られる立場になっていました。
それでも、こうなりました。だから1年目のあなたに読んでほしいのです。経験を積めば防げる、という話ではないからです。

「慣れたら大丈夫」って思うでしょ。私も思ってた。でも違うの。慣れたころのほうが、むしろ無理がきくぶん危ない。
②「ちゃんとやらなきゃ」に追われていた
その時期、4日勤と日勤が続いていて、業務がとても忙しい時期でした。手術の前後の仕事もあって、常に何かに追われていました。
そこに、認定看護師としての周りからの期待が乗ります。しっかりやらなきゃ、と思って仕事に専念していました。
自分の中では、すごく充実していると思っていたんです。うまくやれている、と。
でも、いま振り返ると、あれは充実ではありませんでした。
専念していないとサボっていると思われる。あいつは使えないと思われてしまう。そういうネガティブなものに迫られている感覚が、とても強い年代でした。

……それ、私も1年目なのにもう感じています。

でしょう。1年目には1年目の、8年目には8年目の「思われたくない」があるの。形が違うだけで、中身は同じなんだよ。
③振り返れば、条件は全部そろっていた
あとから冷静に並べてみると、危ない要素がきれいにそろっていました。
あのころの私(悪い見本です)
- 水分をほとんど摂っていなかった
- 食事が偏っていた
- 睡眠を削って仕事していた
- 常に緊張していた
- そして——便が出ているかどうかを把握していなかった
本当によくなかったと思います。ひとつひとつは「よくあること」なのに、そろうと話が変わります。
④自分の排便を、把握していなかった
ここが、いちばん恥ずかしいところです。
看護師は、患者さんの排便を毎日確認します。何日出ていないか、性状はどうか、下剤は必要か。それが仕事です。
その私が、自分の便が何日出ていないかを知りませんでした。
あとから分かったのは、4日以上出ていなかったということでした。気づいていませんでした。

患者さんのことは記録するのに、自分のことは記録しない。おかしいよね。でも、たぶん多くの看護師がそうなんだと思う。

言われてみれば……自分の排便、覚えてないです。
⑤全部終わって、ホッとした瞬間に始まった
その週末、私は研修の主催をしていました。参加して、運営して、夜は懇親会。
そのとき私はすでに結婚していましたが、家族を置いて研修に行ったという負い目がありました。いま思えば、それもストレスとして上乗せされていたのだと思います。
そして、やるべきことが全部終わりました。自宅に帰って、ようやくホッとした。
——その瞬間に、お腹が痛くなりました。

緊張がほどけた瞬間って、体にとっては変化が大きいの。張りつめている間は持ちこたえてしまうんだよね。
⑥出したいのに、出ない|2時間続いた痛みと冷汗
トイレに行きました。「出したい」と思うのに、出ない。
下痢のときのようにお腹がギュルギュルと動いて、「出そう」という感覚は来る。でも、出ない。
この状態が2時間以上続きました。
やがて冷汗が出てきました。お腹の痛みは、耐えられないくらいになっていました。
時計を見ると、夜中の12時でした。

2時間も……。

いま思えば、あの時点でとっくに受診の基準を超えてた。でもね、あのときの私は「そのうち出れば治る」って思ってたの。看護師なのに。
⑦夜中12時、救急外来へ。そして血便、入院
困った私は、家族に助けを求めました。そして救急外来を受診しました。
お腹が痛すぎて、CT検査もまともに受けられませんでした。台の上でじっとしていられないんです。
受診してから2時間後、やっと、やっと排便がありました。
——血便でした。
そのまま入院になりました。診断は虚血性腸炎でした。

自分が患者になって、初めて分かったことがたくさんあった。あの夜のことは、今でもはっきり覚えてる。
⑧虚血性腸炎とは|なぜ便秘が引き金になるのか
虚血性腸炎は、大腸の血流が一時的に足りなくなって、腸の粘膜が傷つく病気です。
「虚血」というと心臓や脳を思い浮かべるかもしれませんが、腸にも起こります。
典型的な出方(この順番で来ます)
- 突然の強い腹痛
- そのあと下痢
- そして血便
左側の大腸(下行結腸〜S状結腸)に起こりやすいとされています。血管のつなぎ目にあたり、もともと血流が細くなりやすい場所だからです。
では、なぜ便秘が引き金になるのか。理由はシンプルです。
便秘 → 虚血性腸炎につながる流れ
- 便がたまると、腸の中の圧が上がる
- 強くいきむと、さらに圧が上がる
- 圧が上がると、腸の壁を流れる細い血管が押しつぶされる
- そこに脱水が重なると、血液が減って流れにくくなる
- → 腸の粘膜に血が届かなくなる
私の場合、便秘・脱水・睡眠不足・強いストレスが全部そろっていました。狙って条件を作ったようなものです。

ひとつずつは、よくあることなのに……。

そう。だから怖いの。「よくあること」が4つ重なると、救急車の話になる。
⑨「若いから大丈夫」は通用しない
虚血性腸炎は、高齢者の病気だと思われがちです。動脈硬化があるとリスクが上がるのは事実です。
でも、便秘のある若い世代にも起こります。実際、私は8年目——決して高齢ではありませんでした。
「若いから」「健康診断で何もなかったから」は、この病気に関しては安心材料になりません。

私も「自分は大丈夫な側」だと思ってた。その思い込みがいちばん危なかった。
⑩1年目のあなたに、いま身につけてほしい5つ
ここからが本題です。8年目の私がやっていなかったことを、1年目のうちから習慣にしてほしいのです。
経験を積んでからでは遅い、というのが私の実感です。忙しくなるほど、あとから身につけるのは難しくなります。
① 自分の排便を把握する
患者さんにはやっていることを、自分にもやるだけです。スマホのメモでも、カレンダーに丸をつけるだけでも構いません。「何日出ていないか言えない」状態を作らないこと。
② 4日出なかったら「体調不良」だと考える
忙しいから、で流さないでください。3日目で対策、4日目は受診を検討する目安です。
③ 水を飲む時間を決める
「飲めるときに飲む」では飲めません。始業前・休憩・記録前など、行動とセットにして決めてしまうほうが続きます。
④ 睡眠を削って仕事を持ち帰らない
削った睡眠は、必ずどこかで請求されます。私は腸で払いました。
⑤「ちゃんとやらなきゃ」を疑う
その気持ち自体は悪くありません。ただ、それが体を犠牲にする理由になっていないかだけ、ときどき確認してください。

5つのうち、いちばん効くのは①だと思う。把握していれば、私はあの夜に救急に行かずに済んだかもしれない。

記録する、だけならできそうです。

そう、それでいいの。難しいことは続かないから。
⑪この症状が出たら、迷わず受診してください
私は2時間我慢しました。あれは間違いでした。同じことをしないでほしいので、はっきり書きます。
すぐに受診してください(我慢しない)
- 血便が出た(鮮血・黒い便のどちらも)
- 突然の強い腹痛が始まった
- 痛みで冷汗が出る、じっとしていられない
- 強い腹痛が2時間以上続いている
- 便が出ないまま、腹痛がどんどん強くなる
- 嘔吐をともなう、発熱がある
※夜間でも救急外来を受診してよい症状です。「朝まで様子を見る」を選ばないでください。
ひとつ大事な補足をします。血便の原因は、虚血性腸炎だけではありません。痔のこともあれば、感染性の腸炎、炎症性腸疾患、大腸の腫瘍のこともあります。
だからこそ、自分で病名を決めずに受診してください。原因を確かめることに意味があります。

看護師って、知識があるぶん自己診断しちゃうんだよね。「たぶんこれだろう」って。でも自分のことは、いちばん見えないの。
⑫頑張りは、体を守ってくれない
この経験から学んだことは、ひとつです。
排便、水分、食事、ストレス、仕事の配分。これらを把握して、調整して、無理をしない。当たり前のことです。
でも私は、それができていませんでした。だから、取り組んでいかなければいけないと再認識しました。
頑張っていれば体が守ってくれる、ということはありません。体は、頑張りの量を評価してくれないのです。

あの入院で失った時間のほうが、削った睡眠よりずっと長かった。皮肉だよね。

無理をしないほうが、結果的にたくさん働けるってことですか。

そういうこと。倒れたら、ゼロだからね。
そのまま使える|自分と職場に言う言葉
① 休憩に入りたいとき
「先に休憩いただいてもいいですか。15分で戻ります」
→ 戻る時間を添えると、頼みやすくなります。
② 体調が悪くて受診したいとき
「体調のことで受診したいので、この日にお休みをいただけますか」
→ 症状を細かく説明する義務はありません。
③ 仕事量が限界のとき
「いま抱えている分だと、時間内に終わりそうにありません。優先順位を一緒に見ていただけますか」
→「できません」ではなく「優先順位の相談」にすると通りやすいです。
④ 自分に言う言葉
「いま私は、何日便が出ていない?」
→ 1日1回、自分に聞くだけで変わります。
よくある質問
Q. 便が何日出なかったら受診の目安ですか?
A. 一般的には3日出なければ対策を、4日以上出ないなら受診を検討する目安とされています。ただし日数だけでは決まりません。腹痛・吐き気・お腹の張りがあれば、日数が短くても受診してください。逆に、いつも4日周期で快調な方もいます。大事なのはいつもと違うかどうかです。
Q. 虚血性腸炎は若くてもなりますか?
A. なります。高齢者に多いのは事実ですが、便秘のある若い世代にも起こります。私自身、8年目のときでした。「若いから大丈夫」は、この病気については通用しません。
Q. 血便が出ましたが、痔かもしれません。様子を見てもいいですか?
A. 様子を見ないでください。痔のこともありますが、感染性腸炎・炎症性腸疾患・大腸の腫瘍など、他の原因も同じような出方をします。原因を確かめることに意味があるので、受診して確定させてください。
Q. 忙しくて水分を摂る時間がありません。
A. 「時間ができたら飲む」では飲めません。始業前・休憩・記録の前など、すでにやっている行動とセットにするのがコツです。ペットボトルを見える場所に置くだけでも変わります。これは根性ではなく、仕組みの問題です。
Q. 休みたいと言うと、周りに迷惑がかかりませんか?
A. 倒れて長期に抜けるほうが、はるかに大きな迷惑になります。私は入院して、結局まとまった期間、現場を空けました。早めに手を打つことが、いちばん職場のためになります。
Q. ベテランになれば、こうならずに済みますか?
A. 残念ながら逆のこともあります。経験を積むほど任される量が増え、無理がきいてしまうぶん、限界に気づきにくくなります。1年目のうちに習慣を作っておくほうが確実です。
まとめ|倒れたら、ゼロになる
私の失敗を、あなたが繰り返す必要はありません。特別なことは何もしなくていいので、把握するところから始めてください。
✅ この記事のチェックリスト
□ 経験を積んでも体は壊れる。むしろ無理がきくぶん危ない
□ 「サボっていると思われたくない」が判断を狂わせる
□ 便秘・脱水・睡眠不足・ストレスがそろうと危険
□ 患者さんの排便は記録するのに、自分のは記録していない
□ 3日出なければ対策、4日以上なら受診を検討
□ 便秘でいきむと腸の内圧が上がり、腸壁の血流が落ちる
□ 脱水が重なると、さらに血が届かなくなる
□ 虚血性腸炎は「腹痛→下痢→血便」の順で来る
□ 若くても起こる。「若いから大丈夫」は通用しない
□ 血便が出たら、原因を自分で決めずに受診する
□ 強い腹痛が2時間続いたら、朝まで待たない
□ 水は「飲めるとき」ではなく、行動とセットで決める
□ 削った睡眠は、必ずどこかで請求される
□ 倒れたらゼロ。早く休むほうが職場のためになる

あの夜、家族に「病院に行こう」って言ってもらえなかったら、私はもっと我慢していたと思う。

看護師って、人には「無理しないでね」って言うのに、自分には言わないんだよね。

だから、いま言わせて。——無理しないでね。あなたが倒れたら、あなたが助けたかった人を助けられなくなるから。

自分の体を守るのも、看護のうちなんですね。今日から、自分の排便を記録してみます。ありがとうございます、しーちゃん!
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