この記事は、これから経験を積んでいく看護師さんの「伴走者」でありたいという思いで書いています。
今うまく対応できなくても、まったく問題ありません。
大切なのは「なぜそうするのか」を一つずつ理解していくこと。
あなたのペースで、いっしょに考えていきましょう。
「トイレに連れて行ってください」——現場でとても多い訴えのひとつです。
普段はベッドの上で過ごしている患者さんでも、「排泄だけはトイレで」という強い思いを持つ方は本当にたくさんいます。疾患や高齢、長期のベッド上生活で筋力が落ち、自由に動けなくなっても、その気持ちは変わりません。むしろ、できないことが増えるほど、「せめてトイレだけは」という思いは強くなることさえあります。
その思いを尊重したくて、夜勤の少ない人数のなか、看護師3人がかりで時間をかけてトイレへ移乗する。汗をかきながら、転倒に気をつけながら、ようやく便座に座ってもらう。
それなのに——いざ座っても、尿は出ない。「あれ、出ませんね」と本人に伝えても、認知症やせん妄があって、座ったことすら覚えていない。やっとの思いでベッドに戻った、その瞬間に、また一言。
「トイレに行きたい」
……正直、心が折れそうになりますよね。今日はこの「とても多いのに、とても難しい」場面について、新人看護師のみらいちゃんと、先輩のしーちゃんといっしょに、ていねいに考えていきましょう。
この記事を読むと、こんなことができるようになります
✔ 繰り返す「トイレ」の訴えを“わがまま”ではなく“サイン”として捉えられる
✔ 尿が出ないときに疑うべき「尿閉」とその確認方法がわかる
✔ 認知症・せん妄が背景にあるときの考え方が整理できる
✔ 対応の引き出しを増やし、自分とチームの負担も減らせる
今日の結論:繰り返す排泄の訴えは、わがままではなく体や心からのサインかもしれません。「出ない」ときこそ尿閉を疑い、膀胱の状態を確認する。そして、ひとりで抱え込まず、チームで対応すること。これが患者さんとあなた自身を守る第一歩です。
- この訴え、なぜこんなに多いの?
- 「心が折れそう」になるのは、当然のことです
- そもそも、おしっこはどう出ているの?
- 「出ない」の裏に隠れるサイン①──尿閉
- なぜ尿閉が起きるの?──背景にある原因
- 見落としがちな視点①──水分・脱水との関係
- 「出ない」の裏に隠れるサイン②──尿閉以外の可能性
- 繰り返す訴えと「認知症・せん妄」
- 見落としがちな視点②──男女差と夜間の訴え
- ついやってしまいがちなNG対応と、その理由
- 対応の「引き出し」を増やそう
- 「尊厳」と「安全」のバランスを考える
- 場面でイメージ──こんなふうに動けたら100点
- 記録・報告と、家族との連携
- 自分とチームを守ることも、立派な看護です
- よくある疑問Q&A
- まとめ──訴えの「裏」を想像できる看護師に
- 🛒 しーちゃんのおすすめ情報
この訴え、なぜこんなに多いの?
まず知っておきたいのは、排泄をトイレで行いたいという思いが、人間にとってとても根源的なものだということです。
排泄は、生きていくうえで欠かせない生理的な行為であると同時に、「人としての尊厳」に深く関わるものです。おむつの中で排泄することへの抵抗感、人の手を借りることへの申し訳なさ、恥ずかしさ——。元気なころは当たり前にできていたことができなくなる喪失感は、私たちが想像する以上に大きいものです。

たしかに……。自分だったらと考えると、寝たまま出してくださいって言われても、やっぱり抵抗があります。

そうだよね。だから「トイレに行きたい」という訴えは、単なるわがままじゃなくて、その人が自分らしくありたいという、とても自然な願いなの。まずはその前提を、心のどこかに置いておいてほしいな。
長くベッド上で過ごす患者さんほど、自分でできることが限られていきます。そんな中で「排泄だけは自分の意思で、トイレで」という思いが強くなるのは、ごく自然なことなのです。
「心が折れそう」になるのは、当然のことです

でも正直に言うと……何度も連れて行って、出なくて、戻ったらまた「行きたい」って言われると、私の対応が悪いのかなって落ち込んじゃって。自分が冷たい人間に思えてくるんです。

みらいちゃん、それはあなたが冷たいからじゃないよ。むしろ患者さんの思いに真剣に向き合っているからこそ、しんどくなるの。これはね、ベテランでも「大変だ」と感じる場面なんだよ。
看護師3人がかりの移乗は、体力的にも大きな負担です。それを繰り返しても結果が出ず、本人にも伝わらない。「自分のケアに意味があるのだろうか」と無力感を覚えるのは、決してあなただけではありません。

大事なのは、その「しんどい」を自分のせいにしないこと。そして、しんどさの裏にある“本当の原因”に目を向けること。次から、その原因をいっしょに見ていこうね。
そもそも、おしっこはどう出ているの?
尿閉を理解するために、まずは正常な排尿のしくみを、ざっくりおさえておきましょう。むずかしく考えなくて大丈夫です。
腎臓で作られた尿は、膀胱という袋にためられます。膀胱にある程度たまると、「そろそろトイレに行きたいな」という尿意が脳に伝わります。そしてトイレで、膀胱がギュッと縮み、同時に出口(尿道括約筋)がゆるむことで、尿がスムーズに出ていきます。

膀胱が縮むのと、出口がゆるむのが、同時に起こるんですね。

そう。この連携がうまくいかないと、出せなくなるの。出口が狭い(前立腺肥大)、膀胱の収縮が弱い(神経の問題や薬の影響)、たまりすぎて膀胱が伸びきってしまう……。どこかにつまずきがあると、尿閉につながるんだ。
つまり「尿意はあるのに出せない」というのは、本人の気のせいでも、わがままでもなく、体のしくみのどこかに原因がある状態だということ。ここが腑に落ちると、患者さんへの見方がやわらかくなります。
また、長くベッドで寝ている方は、寝た姿勢では腹圧(お腹に力を入れて押し出す力)をかけにくく、それだけでも出しづらくなります。「座る」「少し前かがみになる」という姿勢が、排尿を助けることもあるのです。

だからトイレやポータブルトイレで“座る”ことには、ちゃんと意味があるの。尊厳の面だけじゃなく、体のしくみの面でも理にかなっているんだよ。
「出ない」の裏に隠れるサイン①──尿閉
何度もトイレを訴えるのに、座っても尿が出ない。少量しか出ない。そんなときにまず考えたいのが尿閉(にょうへい)です。
尿閉とは、膀胱に尿が溜まっているのに、自分でうまく出せない状態のこと。膀胱がパンパンに張ることで、強い尿意・下腹部の不快感・落ち着かなさが生まれます。本人は「出したいのに出せない」苦しい状態。だから何度も「トイレに行きたい」と訴えるのです。

えっ、出ないのに溜まってる…? それは本人もつらいですよね。

そうなの。しかも認知症やせん妄があると「お腹が張って苦しい」とうまく言葉にできなくて、「トイレに行きたい」という形でしか伝えられないことも多いんだ。だから訴えの“言葉どおり”じゃなく、体の状態を見にいくことが大事なの。
尿閉を疑うサイン
- 頻回にトイレを訴えるのに、出ない・少量しか出ない
- 下腹部(恥骨の上あたり)が張っている/触れると苦しがる
- そわそわして落ち着かない、興奮している
- 最後に排尿した時間から、かなり経っている
- 少しずつ漏れるのに、すっきりしない(溢流性尿失禁)
膀胱スキャンで「溜まっているか」を確認する
尿閉が疑われたら、膀胱用超音波(膀胱スキャン/残尿測定器)で、膀胱にどれくらい尿が溜まっているかを確認します。当てるだけで残尿量がわかる、患者さんに負担の少ない検査です。
溜まっていることが確認できたら、医師の指示のもとで導尿(カテーテルで尿を出す)を行います。溜まっていた尿がスッと出ると、あれほど繰り返していた訴えが、うそのように消えることがあります。

訴えが消えると、こっちもホッとしますね……。でも、それって「わがまま」じゃ全然なかったってことですよね。

そのとおり。「わがまま」と思って対応するのと、「サインかも」と思って対応するのとでは、見えるものが全然ちがう。あなたはもう、ちゃんとサインとして見られているよ。
なぜ尿閉が起きるの?──背景にある原因
尿閉にはさまざまな原因があります。「なぜこの患者さんは出せないのか」を考えるヒントとして、代表的なものを知っておきましょう。
尿閉を起こしやすい主な原因
- 前立腺肥大:高齢男性に多く、尿の通り道が狭くなる
- 薬剤の影響:抗コリン薬・一部の風邪薬・オピオイド(医療用麻薬)など
- 神経の問題:脊髄疾患・糖尿病などによる神経因性膀胱
- 便秘:硬い便が膀胱や尿道を圧迫する
- 手術・分娩のあと:一時的に排尿機能が落ちる
- 長期臥床:腹圧がかけにくく、出しづらくなる

原因がわかると、「この人は前立腺かもしれない」「最近この薬が増えたな」って、次の一手が見えてくる。看護記録や指示を見返すクセをつけると、グッと視野が広がるよ。
見落としがちな視点①──水分・脱水との関係
「トイレに行きたい」と頻回に訴えるからといって、水分を控えればいい、という単純な話ではありません。ここも新人さんが迷いやすいポイントです。

正直、何度も訴えられると「お水を控えめにした方がいいのかな」って思っちゃってました……。

気持ちはわかるけど、それは要注意。水分を減らしすぎると脱水になって、かえって尿が濃くなって膀胱を刺激したり、尿路感染や、せん妄の引き金になったりするの。訴えが増える原因を、自分で作っちゃうこともあるんだ。
特に高齢の患者さんは、もともと体の水分量が少なく、脱水になりやすい傾向があります。脱水は、ぼんやり・元気がない・口の渇き・尿量の減少などの形で現れ、全身状態の悪化にもつながります。
水分まわりで気をつけたいこと
- 自己判断で水分を大きく制限しない(指示の範囲で)
- 夕方以降のカフェイン(コーヒー・お茶)は、夜間頻尿の一因に
- 尿の色が濃い・量が少ないときは脱水のサインかも
- 水分制限の指示がある場合は、必ずその範囲を守る

「訴えを減らすために水分を減らす」じゃなくて、「適切な水分量を保ちながら、排尿のタイミングを整える」。これが正しい方向なんだよ。
「出ない」の裏に隠れるサイン②──尿閉以外の可能性
繰り返す訴えの背景は、尿閉だけとは限りません。膀胱スキャンで「あまり溜まっていない」ときは、別の原因を考えます。
尿閉以外で考えたいこと
- 尿路感染症(UTI):頻尿・残尿感・排尿時痛。発熱や尿の混濁にも注意
- 残尿感:出してもスッキリせず、また行きたくなる
- 便秘・腹部不快:「下腹部の違和感」を尿意と感じている
- 不安・寂しさ:誰かに来てほしい気持ちの表現としての訴え
- 環境の不快:おむつの濡れ・かぶれ・冷えなど

「トイレに行きたい」の一言に、こんなにいろんな可能性があるんですね……。全部同じに見えてました。

最初はみんなそうだよ。でも「これは尿閉かな、感染かな、それとも不安かな」って引き出しを持っておくだけで、対応が変わってくるの。同じ訴えでも、原因が違えば手当ても違うからね。
繰り返す訴えと「認知症・せん妄」
認知症やせん妄がある患者さんの場合、対応はさらに難しくなります。トイレに行ったこと自体を覚えていないため、数分後・数時間後に同じ訴えが繰り返されるのです。

さっき行きましたよ、って伝えても通じなくて……。どう言えばいいか分からなくなります。

「さっき行ったでしょう」は、本人にとっては身に覚えのない話。否定されたと感じて、かえって不穏になっちゃうこともあるの。だから事実を正そうとするより、まず気持ちを受け止める方がうまくいくことが多いよ。
せん妄かもしれない、という視点も大切
急に落ち着かなくなった、夜になると訴えが増える、いつもと様子が違う——。そんなときはせん妄の可能性も考えます。せん妄は、感染・脱水・薬剤・環境の変化などをきっかけに起こる、一時的な意識の混乱です。
せん妄の場合、その不快感や不安が「トイレに行きたい」という訴えになって現れることもあります。背景に身体的な原因(尿閉・感染・脱水など)が隠れていることも多いので、「いつもと違う」と感じたら、必ず先輩や医師に共有しましょう。
認知症・せん妄の方への声かけのコツ
・「さっき行ったでしょう」と否定しない
・「行きたいんですね、確認しますね」と気持ちを受け止める
・落ち着いたトーンで、安心できる声かけを
・身体的な原因(尿閉・痛み・不快)がないか、まず確認する
見落としがちな視点②──男女差と夜間の訴え
排尿のトラブルには、男女で起こりやすい原因の違いがあります。知っておくと、原因を考えるヒントになります。
男女で多い背景の違い(一例)
- 男性:前立腺肥大による尿の出にくさ・尿閉が多い
- 女性:骨盤底筋のゆるみによる頻尿・尿もれ、尿路感染が多い
また、夜になると訴えが増える方も多くいます。これは夜間に作られる尿の量の変化や、暗さ・静けさによる不安、せん妄の悪化(夕方から夜にかけて症状が強まる「夜間せん妄」)などが関係していることがあります。

夜に訴えが増えるのにも、ちゃんと理由があるんですね。「夜だから仕方ない」で済ませちゃいけないんだ。

そうなの。「なんで夜なんだろう?」って考えられる人は強い。不安なら安心できる声かけ、尿閉なら身体の確認、と、理由に合わせて手当てを選べるからね。
ついやってしまいがちなNG対応と、その理由
最後に、忙しさや戸惑いから、つい新人さんがやってしまいがちな対応を整理しておきます。どれも「気持ちはわかる」ものばかり。責めるためではなく、立ち止まるきっかけにしてください。
気をつけたいNG対応
- 「さっき行ったでしょう」と事実で押し返す → 認知症・せん妄の方には届かず、不穏のもとに
- 「わがまま」と決めつけて流す → 尿閉や感染などのサインを見逃す危険
- 訴えを減らすために水分を勝手に控える → 脱水・感染・せん妄を招くことも
- 一人で抱え込んで我慢する → あなたが消耗し、ケアの質も下がる
- 記録を後回し・省略する → 傾向がつかめず、次の対応に活かせない

うっ……正直、いくつか心当たりがあります。特に「さっき行きましたよ」って、つい言っちゃってました。

大丈夫、誰もが通る道だよ。大事なのは、気づいて変えていけること。「これはNGかも」と立ち止まれた時点で、もうあなたは成長してるの。
NG対応の共通点は、「訴えの“言葉”だけに反応して、“裏”を見ていない」こと。逆にいえば、いつも「この訴えの裏に何があるんだろう?」と一呼吸おくクセをつければ、自然とNGは減っていきます。
困ったときの合言葉
「またか」ではなく「何かのサインかも」。
この一言を心の中でつぶやくだけで、対応も、患者さんの見え方も変わります。
対応の「引き出し」を増やそう
原因が見えてきたら、次は具体的な対応です。万能の正解はありませんが、引き出しが多いほど、その患者さんに合った関わりが見つかります。
アセスメントと対応の基本ステップ
- まず身体を確認:膀胱スキャンで残尿、下腹部の張り、最終排尿時間をチェック
- 尿閉なら:医師に報告し、指示のもとで導尿を検討
- 感染を疑うなら:尿の性状・発熱・痛みを観察し報告
- 排尿パターンを把握:いつ・どのくらい出ているか記録して傾向をつかむ
- 時間で誘導:訴えを待つより、パターンに合わせて先に声かけ・誘導
- 環境を整える:ポータブルトイレの活用、おむつの調整、室温
「訴えがあってから動く」だけでなく、排尿パターンをつかんで先回りで誘導することで、本人の不快感も、スタッフの負担も減らせることがあります。記録は、その傾向をつかむための大切な道具です。

待つんじゃなくて、こちらからタイミングを作るんですね。記録ってそのためにあるんだ……。

そう。「この人は食後によく尿意が来る」とかが分かれば、慌てて3人がかり、を減らせるかもしれない。記録は未来の自分とチームを助けるんだよ。
「尊厳」と「安全」のバランスを考える
トイレで排泄したいという思いは尊重したい。でも、移乗の負担や転倒のリスク、夜間の人手の問題もある——。ここに、この場面の難しさがあります。

大事なのは、「トイレ移乗か、おむつか」を白か黒かで決めつけないこと。ポータブルトイレ、尿器、安全な移乗方法、留置カテーテルの是非……いろんな選択肢を、本人やチーム、医師といっしょに考えていくの。
たとえば留置カテーテル(バルーン)は、尿閉が続く場合の選択肢になりますが、感染リスクや本人の尊厳の問題もあり、安易に使うものではありません。「その人にとって何がいちばん良いか」を、多職種で考えていく姿勢が大切です。

一人で決めなくていいんですね。チームでいいんだ、って思うと少し気持ちが軽くなります。
場面でイメージ──こんなふうに動けたら100点
ここまでの流れを、実際の夜勤の場面でイメージしてみましょう。みらいちゃんが、繰り返し訴える患者さんを受け持ったところからです。
(場面:夜勤帯。Aさん(80代・ベッド上生活・軽い認知症)が、30分前にトイレ移乗したばかりなのに、また「トイレに行きたい」と訴えている)

(心の声:さっき行ったばかり……でも、何かのサインかも。まず体を見てみよう)Aさん、トイレに行きたいんですね。お腹の調子、ちょっと見せてもらえますか?
(みらいちゃんは下腹部を確認。恥骨の上が張っていて、触れるとAさんが顔をしかめる。最終排尿は数時間前。膀胱スキャンをすると、多量の残尿が確認できた)

しーちゃん、Aさんの下腹部が張っていて、膀胱スキャンでもかなり溜まっています。最終排尿から時間も経っていて……尿閉かもしれません。

よく気づいたね。すぐに先生に報告しよう。指示が出たら、いっしょに導尿しようか。
(医師に報告し、指示のもとで導尿を実施。たまっていた尿が出ると、Aさんの表情がやわらぎ、落ち着いて休まれた)

Aさん、さっきまであんなにそわそわしてたのに、すーっと眠られました。本当に苦しかったんですね……。

「トイレに行きたい」を、ちゃんと体のサインとして受け取れたからこそだよ。もし“わがまま”だと思って流していたら、Aさんはずっと苦しいままだった。みらいちゃんの観察が、Aさんを救ったんだ。

訴えの裏を見るって、こういうことなんですね。次からも、ちゃんと体を見にいきます。
記録・報告と、家族との連携
対応したあとは、記録と報告までがワンセットです。地味に見えて、これがチームの対応の質を大きく左右します。
記録に残したいこと
- 訴えの時間・頻度(いつ、何回くらい)
- 排尿の有無・量・性状(色・におい・混濁)
- 下腹部の張り・最終排尿時間・膀胱スキャンの結果
- 行った対応(導尿・誘導・声かけ)と、その後の様子
こうした記録が積み重なると、「この方は夕方に尿閉を起こしやすい」といった傾向が見えてきて、先回りの対応につながります。次の勤務者も、同じ目線でケアできます。

それから、ご家族への説明も大切。「何度もトイレを訴えるのは、尿が出にくくなっているサインで、こうして対応しています」と伝えておくと、ご家族も安心するし、状況も理解してもらいやすくなるよ。

記録も報告も家族への説明も、ぜんぶ「その人をチームで支える」ためにつながってるんですね。
自分とチームを守ることも、立派な看護です
繰り返す訴えへの対応は、心身ともに消耗します。だからこそ、患者さんを守るのと同じくらい、自分とチームを守ることも大切にしてください。
抱え込まないためのポイント
- 一人で背負わない:「対応に困っている」と早めに先輩へ相談
- 申し送りで共有:訴えの頻度・対応・効果をチームで引き継ぐ
- ケアプランを見直す:個人の頑張りでなく、仕組みで対応する
- 自分の感情も認める:「しんどい」と感じる自分を責めない

「しんどい」って言っていいんですね。ずっと、弱音かなって我慢してました。

弱音じゃないよ。それだけ真剣に向き合ってる証拠。しんどさを言葉にして共有することも、立派なチーム医療なの。あなたが倒れたら、患者さんを守れないからね。
よくある疑問Q&A
Q. 何度も訴えられて、つい「さっき行きました」と言ってしまいます
A. 事実を伝えること自体は悪くありませんが、認知症やせん妄の方には届かず、不穏を強めることも。「行きたいんですね、確認しますね」と気持ちを受け止める対応に切り替えてみましょう。
Q. 膀胱スキャンで溜まっていなければ、様子を見ていい?
A. 溜まっていなくても、感染・便秘・不安など別の原因が隠れていることがあります。「溜まっていない=問題なし」ではなく、ほかのサインも合わせて観察し、いつもと違えば報告しましょう。
Q. 夜間、人手が足りずトイレ移乗が難しいときは?
A. 無理な移乗は転倒事故につながります。ポータブルトイレや尿器の活用、安全な人数が確保できるまで待ってもらうなど、安全を優先した判断を。一人で抱えず、リーダーに相談しましょう。
まとめ──訴えの「裏」を想像できる看護師に
「トイレに行きたい」を繰り返す患者さん。それは、わがままでも、あなたのケアが下手だからでもありません。体や心からの、大切なサインかもしれないのです。
この記事のポイント
- 排泄をトイレで、という思いは尊厳に関わる自然な願い
- 心が折れそうになるのは、真剣に向き合っている証拠
- 「出ない」ときはまず尿閉を疑い、膀胱スキャンで確認
- 尿閉以外に、感染・便秘・不安・環境などの可能性も
- 水分は自己判断で減らさない(脱水・感染・せん妄に注意)
- 認知症・せん妄では否定せず、気持ちを受け止める
- 排尿パターンを把握し、先回りの誘導・環境調整を
- 尊厳と安全のバランスは、チーム・多職種で考える
- 自分とチームを守ることも、立派な看護

今度から、「またか」じゃなくて「何かのサインかも」って思えそうです。少し、患者さんの見え方が変わりました。

その視点が持てたら、もう大きな一歩。訴えの“裏”を想像できる看護師は、患者さんにとって本当に頼れる存在だよ。みらいちゃん、よく頑張ってるね。
最初は誰でも、繰り返す訴えに戸惑い、無力感を覚えるものです。
でも、その一つひとつに意味を見つけようとするあなたの姿勢は、もう立派な看護の力です。
うまくいかない日があっても、大丈夫。
あなたのその優しさは、ちゃんと患者さんに届いています。
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