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はじめにお読みください
この記事は、私が病棟で舞踏病の患者さんに関わった経験と、舞踏病についての一般的な説明をまとめたものです。個人が特定されないよう、年齢・原因の病気・経過などはぼかしています。診断や治療、点滴の場所などは、必ず医師の指示と施設の手順に従ってください。
「手足がずっと動いていて、暴れているように見える」
「点滴を入れても、すぐ引っかけて抜けてしまう」
「どう声をかけて、どう関わればいいのか分からない」
——初めて見ると、驚くと思います。私もそうでした。でも、体は勝手に動いていても、頭ははっきりしていて、話はふつうにできることが多いんです。
今回は、私が初めて舞踏病の患者さんを受け持ったときの話と、けがや転落から守るためにしたこと、そして舞踏病がどんな病気なのかをまとめました。

しーちゃん、受け持ちの患者さんの手足が、ずっと勝手に動いているんです。
「舞踏病」って申し送りで聞いたんですけど、どうしたらいいか分からなくて……。

私も初めて見たときは、びっくりしたよ。何人か受け持ったけど、本当に手も足も、ずっと動き続けているんだよね。

暴れているみたいに見えて、ちょっと近づくのがこわいです……。

そう見えるよね。でも、実は会話はしっかりできる人が多いの。
今日は、私が実際にしたケアと、舞踏病ってどんな病気なのかを、一緒に見ていこう。
📌 この記事でわかること
- 初めて見た舞踏病の患者さんの様子
- 見た目と会話の「ミスマッチ」に驚いたこと
- けがを防ぐための、ベッドまわりの工夫
- 点滴が何度も抜けたときにしたこと
- 冷や汗をかいた、ベッドから降りようとした場面
- 舞踏病とはどんな病気か(原因と治療)
①初めて見た舞踏病|手足が24時間、勝手に動き続ける
舞踏病の患者さんを、何人か受け持ったことがあります。
初めて見たときは、本当に驚きました。手も足も、本人の意思とは関係なく、勝手に動いてしまうんです。
一見すると、不穏な患者さん、暴れている患者さんのように見えます。手足をずっと、24時間ずっと動かしている感じです。
眠っているときは、少しおとなしくなります。でも、声をかけたり、ケアをしたりするときには、またすぐに動き始めてしまう。

「落ち着いてください」と言いたくなるけど、本人は動かそうとして動かしているわけじゃないの。
ここを知っているかどうかで、声のかけ方がまったく変わるよ。
②見た目と会話のミスマッチ|頭は、はっきりしている
意外だったのは、会話です。
手足が大きく動き続けていて、寝たきりで、足には力も入らない。それなのに、話をすると頭ははっきりしていて、ふつうにコミュニケーションがとれるんです。
見た目と、会話の中身が合わない。「あ、しっかりしているんだ」と、驚いたのを覚えています。
だからこそ、見た目で判断しないことが大事です。たとえば、子どもに話しかけるような口調になっていないか。本人の前で、本人のことを他のスタッフと話していないか。全部、ちゃんと伝わっています。

動きだけ見て、話が通じないと思い込んでいたかもしれません……。
③けがを防ぐ|ベッド柵と頭の上に、保護のマット
手足が大きく動くので、ベッド柵に何度も手をぶつけてしまいます。そのままだと、あざや傷ができてしまう。
そこで、ベッド柵に保護のマットをつけました。手が頭の上のほうにも行くので、頭の上にも衝撃を吸収するマットを置きました。
動きを止めることはできなくても、ぶつかってもけがをしない環境はつくれます。とにかく、けがをさせないことを第一に考えました。
けがを防ぐベッドまわりの工夫
- ベッド柵に保護のマット(クッション)をつける
- 頭の上・ベッドの頭側にも、衝撃を吸収するマットを置く
- 手の届くところに、かたい物やとがった物を置かない
- ナースコールは、押しやすく、ぶつけにくい場所に
- 皮膚のあざ・すり傷・赤みを、毎日確認する
※使う物品や方法は、施設の手順に沿ってチームで決めましょう。
④点滴が何度も抜ける|腕から足へ入れ直した
いちばん困ったのが、点滴です。
そもそも、動き続ける腕に点滴を入れるのが大変です。やっと入れても、手をいろいろなところに振るので、管を引っかけて抜けてしまう。その繰り返しでした。
この方は、腕の振りがとくに強い印象がありました。足のほうが、比較的動きが単純に見えたんです。
そこで、腕に入れていた点滴をやめて、ご本人に説明したうえで、足に入れさせてもらいました。そこからは、点滴を続けることができました。
動きが大きい人の点滴で考えること
- どの部位が、いちばん動きが小さいかを観察する
- 入れる前に、本人に説明する(頭ははっきりしていることが多い)
- 管を引っかけにくい通し方・固定を工夫する
※足の点滴は、腕にくらべて静脈炎や血栓に注意が必要とされています。どこに入れるかは、必ず医師と相談し、施設の手順に従ってください。

「どこが一番動いていないかな」って、しばらく見ているだけでもヒントが見つかるよ。
⑤冷や汗をかいた場面|リモコンでベッドを下げて、降りようとしていた
手足をずっと動かしていても、起き上がりたい、ベッドから降りたいという気持ちは、ほかの患者さんと同じです。
ある日、部屋に行くと、その方が手足を大きく振りながら、自分でベッドのリモコンを触って、降りようとしていました。
足には力が入らない状態です。そのまま降りていたら、転んで大変なことになるところでした。——こちらが冷や汗をかきました。
なんとか見つけて、ベッドに戻ってもらうことができました。本当に危なかったと思います。
転落を防ぐために
- 「起き上がりたい」「降りたい」気持ちはある、と前提にしておく
- ベッドの高さは低くしておく
- 訪室のたびに、トイレや体の向きなど、用事を先に聞く
- リモコンやセンサーの扱いは、本人と話し、チームで相談する

動きが大きいから、自分では降りないと思っていました……。

私もそう思っていたから、冷や汗をかいたの。
体の動きと、「降りたい」という気持ちは別もの。ここは覚えておいてね。
⑥飲み込みは意外と保たれていた|薬で少しずつ落ち着いていく
意外だったことが、もう一つあります。この方は、数日たつと、誤嚥せずにご飯を食べられるようになったんです。手足の動きにくらべて、飲み込みにはあまり影響がないように見えました。
ただ、これはこの方の場合です。原因の病気によっては、飲み込みに影響が出ることもあるので、食事のときのむせや声の変化は必ず見てください。
治療では、セレネース(ハロペリドール)という、動きをおさえる飲み薬などを使いました。少しずつ症状が落ち着いていき、途中からは、自分でお椀を持ってご飯を食べられるようになりました。
最初のころは、本当に想像できないくらい、手足が踊り続けていました。
⑦本人がいちばんつらい|安全を守って、思いを聞く
ご本人は、「動かしたくて動かしているわけじゃない。すごくつらい」と話していました。
自分の体が、自分の思いどおりにならない。頭ははっきりしているからこそ、そのつらさは大きいと思います。
看護師にできることは、とりあえず安全を守ること。そして、本人の思いを聞いていくこと。それくらいしかできないのかもしれません。
でも、けがをしない環境をつくり、思いを聞き、日常の生活をきちんと支える。それが看護師として大事なことなんだと感じた場面でした。

「こういう病気もあるんだ」って、私もこの方たちから教わったの。
あなたも、もし出会ったら、まずはけがを防いで、それから本人の話を聞いてみてね。
⑧【解説】舞踏病とは?|原因と治療をかんたんに
最後に、舞踏病がどんな病気なのかをまとめます。
舞踏病(舞踏運動)は、自分の意思とは関係なく、手足や顔などが、踊るように不規則に動いてしまう症状です。体の動きを調整している脳の部分(大脳基底核、とくに線条体)の働きが乱れて起こると考えられています。
「舞踏病」という一つの病気があるというより、いろいろな病気が原因で起こる症状です。
舞踏病の主な原因
- ハンチントン病:遺伝による病気。舞踏運動を起こす病気の中で、代表的なもの
- 糖尿病性舞踏病:高血糖や、急な血糖の変化をきっかけに起こる。体の片側に出ることが多く、血糖が整うと軽くなることが多い
- 脳梗塞など脳の血管の病気
- 甲状腺の病気など、体の代謝の異常
- 薬の副作用
治療
- 原因の病気を治療する(たとえば糖尿病性なら、血糖のコントロール)
- 動きが強いときは、動きをおさえる薬(ハロペリドール=セレネースなど)を使うことがある
※原因や治療は人によって違います。診断と治療は医師が行います。

原因がいろいろあるんですね。糖尿病でも起こるなんて知りませんでした!
よくある質問
Q. 舞踏病の人は、話や理解に問題があるの?
A. 原因によって違いますが、私が受け持った方のように、話はしっかりできることも多いです。ハンチントン病など、病気によっては考える力に影響が出ることもあります。見た目だけで判断せず、まずは話してみてください。
Q. 動きが大きくて、点滴がすぐ抜けてしまうときは?
A. どの部位がいちばん動きが小さいかを観察して、医師と相談します。私は腕から足に入れ直しました。足の点滴は静脈炎や血栓に注意が必要なので、観察を続けてください。
Q. けがを防ぐには、どうすればいい?
A. 動きを止めるのではなく、ぶつかってもけがをしない環境をつくります。ベッド柵や頭の上に保護のマットをつけ、かたい物を近くに置かないようにしましょう。皮膚のあざや傷も毎日確認します。
まとめ|動きは止められなくても、けがは防げる
✅ 舞踏病の患者さんを受け持ったときのチェックリスト
- □ 本人は動かしたくて動かしているわけではない、と知っている
- □ 見た目で判断せず、ふつうに話しかけている
- □ ベッド柵や頭の上に、保護のマットをつけている
- □ 手の届くところに、かたい物を置いていない
- □ 皮膚のあざ・傷を毎日確認している
- □ 点滴は、動きの小さい部位を医師と相談している
- □ 「降りたい」気持ちがあると前提にして、ベッドを低くしている
- □ 食事のときのむせを見ている
- □ 本人のつらさや思いを、聞いている

初めて見ると驚くし、こわいと感じるかもしれない。
でも、目の前にいるのは「ちゃんと話せる、つらい思いをしている人」なの。けがを防いで、話を聞く。それだけで、患者さんの毎日は変わるよ。応援してるよ!

動きに驚いて、本人の気持ちを見ていませんでした。明日は、マットを確認して、ゆっくり話を聞いてみます。
ありがとうございます、しーちゃん!
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