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はじめにお読みください
この記事は、私が病棟で何度も経験してきたことと、入院中の発熱についての一般的な考え方をまとめたものです。「転院前に熱が出やすい」は私の経験からの実感で、調べた数字ではありません。検査や治療は、必ず医師の指示と施設の手順に従ってください。
「転院まであと2日。書類もそろったのに、熱が出た」
「なぜか、転院の直前に熱を出す人が多い気がする」
「熱が出たら、まず何を考えて、何を報告すればいいの?」
——その「不思議」、私も何度も経験しています。そして、入院中の発熱にはまず疑う3つの原因(肺・おしっこ・お腹)があります。これを知っているだけで、報告も、そのあとの動きも変わります。
今回は、転院直前に熱が出てしまう患者さんの話と、毎日のケアでできること、そして院内で熱が出たときにまず考えることをまとめました。

しーちゃん、明後日転院の患者さんが、今日になって熱を出しちゃって……。転院、延期になるかもしれないんです。

あるある……。不思議なんだけど、転院の直前になって熱が出る人、本当に多いんだよね。

しーちゃんの病棟でもあるんですか!?

何度もあるよ。でもね、「不思議だね」で終わらせちゃいけないの。
今日は、転院前に熱が出る話と、毎日のケアでできること、それから院内で熱が出たときにまず考えることを、一緒に整理しよう。
📌 この記事でわかること
- 転院直前に熱が出てしまう、という「不思議」の話
- その熱が本物かどうか、まず確かめること(測り方)
- 寝たきりの人の熱は、誤嚥性肺炎と尿路感染症が多いこと
- 転院前こそ大事な、毎日のケア(口腔ケア・頭を上げる・陰部洗浄)
- 【勉強コーナー】院内で熱が出たら、まず疑う3つと検査
- 熱が出たときの報告と、そのあとの看護師の動き
①やっと決まった転院。あと2日で、なぜか熱が出る
病状がとても深刻で、寝たきりになってしまった患者さんがいました。
ご家族の希望を聞き、ご本人の具合を見ながら、なんとか治療を長く続けてきました。そして、やっと急性期の治療を終えて、転院が決まります。
「あと2日で転院だね」。最後の書類を準備していた、そのときです。——熱が出ました。
熱が出れば、転院は延期になることがあります。どこの病院でも同じなのかは分かりません。でも私の経験では、転院の直前に熱を出す人が、なぜかとても多いんです。寝たきりの方だと、特にそう感じます。
正直に言うと、いつも残念な気持ちになります。こちらも、ご家族も、やっと準備してきた。やっと患者さんが次の場所へ行ける。そのタイミングで、「なんで、ここで熱が出るの……」と。

転院の準備って、ご家族との話し合いや書類、転院先との連絡で、何週間もかかることがあるよね。
だからこそ、最後の2日での発熱は、こたえるんだよ。

わかります……。昨日まで「もうすぐだね」って話していたのに。
②その熱、本物?|まず測り方を確かめる
熱が出たら、最初に確かめたいのが「正しく測れているか」です。
寝たきりの方や、麻痺で腕が動かない方は、わきの下に熱がこもったり、麻痺のある側でうまく測れなかったりして、正しい値が出ないことがあります。
熱を測るときに確かめること
- 麻痺のない側で、いつも同じ側で測っているか
- わきの汗をふいてから、体温計をしっかりはさんでいるか
- 布団や体位で、わきに熱がこもっていないか
- 少し時間をおいて、測り直してみたか
- 脈拍・呼吸数・SpO2・血圧も一緒に見たか(熱だけでなく、脈や呼吸も速くなっていないか)
※測り方は施設の手順に従ってください。
ただ、測り方の問題だけではありません。本当に、突然熱が出ることがあるんです。測り直しても下がらない、脈や呼吸も速い。そんなときは、体の中で何かが起きています。
③寝たきりの人の熱は、誤嚥性肺炎と尿路感染症が多い
寝たきりの方の熱の原因として、私が多いと感じるのは、誤嚥性肺炎と尿路感染症です。
誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が気管に入って起こる肺炎)
寝たきりの方は、飲み込む力や、むせて吐き出す力が弱くなっています。寝た姿勢のままだと、唾液や口の中の細菌が、気管へ流れこみやすくなります。食事をしていない方でも、唾液を誤嚥して肺炎になることがあるんです。
尿路感染症(おしっこの通り道に細菌が入って起こる感染)
おむつや尿道カテーテル(膀胱に入れて尿を出す管)を使っている方は、陰部に細菌がつきやすく、そこから感染が起こることがあります。尿の流れがとどこおることも、感染のきっかけになります。

どちらも、寝たきりというだけで毎日リスクがある状態なんだよね。
だから「転院前だから」ではなく、「いつ起きてもおかしくない」と思っておくと、見方が変わるよ。
④転院前こそ大事な、毎日のケア|誤嚥と尿路感染を防ぐ
医師も看護師も、もちろん注意しながら毎日の治療とケアをしています。それでも、熱は出ることがある。だからこそ、毎日のケアの一つひとつが大事なんだと、あらためて感じました。
誤嚥を防ぐケア
- 口腔ケア:口の中の細菌を減らす。誤嚥したときの肺炎を防ぐ
- 吸引:たまった痰や唾液をとる。量や色の変化も見る
- 頭を上げる:平らに寝かせたままにしない。ベッドの頭側を少し上げる(角度は施設の手順・医師の指示で)
尿路感染を防ぐケア
- 尿の観察:色・にごり・におい・量の変化
- 陰部洗浄:きちんと洗って、清潔を保つ
- 尿道カテーテルの管理:管が折れていないか、袋が膀胱より高い位置にないか
毎日見ること
- バイタルサインの変化(熱・脈・呼吸数・SpO2・血圧)を、前の日と比べる

転院の前は、書類や連絡でバタバタするよね。
でも、患者さんの体を守るのは、最後の日まで毎日のケアなの。口腔ケア1回、陰部洗浄1回が、転院の日を守ってくれるんだと思う。
⑤【勉強コーナー】院内で熱が出たら、まず疑う3つ
ここからは勉強コーナーです。入院中の患者さんが熱を出したとき、まず疑うのは「誤嚥性肺炎」「尿路感染症」「腸炎」の3つです。
この3つと、それぞれの検査を知っていると、医師への報告で何を伝えればいいか、報告のあとに看護師が何をするのかが分かるようになります。
| まず疑う原因 | 看護師が見ること | よく出る検査 |
|---|---|---|
| ① 誤嚥性肺炎 | 痰の量・色、呼吸数、SpO2、呼吸の音、むせ | 痰の培養 |
| ② 尿路感染症 | 尿の色・にごり・におい、尿道カテーテルの有無 | 尿の培養(尿の検査) |
| ③ 腸炎 | 下痢の回数・性状、お腹の張りや痛み | 下痢があれば便の検査(便の培養など) |
そして、熱の原因を探るためによく行うのが、血液培養です。血液の中に細菌がいないかを調べる検査で、2か所から2セットとるのが一般的です。
勉強コーナーのまとめ
- 院内の発熱は、まず肺(誤嚥性肺炎)・おしっこ(尿路感染症)・お腹(腸炎)の3つ
- 検査は、痰の培養・尿の培養・(下痢があれば)便の検査
- 原因を探るために、血液培養(2セット)
- 入院中の下痢では、抗菌薬などをきっかけに起こる腸炎(CD腸炎)の検査をすることもある
- 3つ以外にも、点滴などの管からの感染、床ずれ(褥瘡)、薬による熱、血栓などが原因のことがある
※どの検査をするかは医師が決めます。培養は、抗菌薬を始める前にとるのが望ましいとされています。施設の手順を確認してください。

3つを覚えておけば、報告のときに何を見ておけばいいか分かりますね!

そう。それに、報告したあと「痰と尿と血液の培養お願い」って指示が出ても、あわてなくてすむよ。
先に容器の場所を確かめておくと、さらに動きやすいからね。
⑥熱が出たときの報告と、そのあとの看護師の動き
報告するときは、「いつもの値」と「今の値」を並べて伝えると、医師が判断しやすくなります。たとえば、こんなふうに。
そのまま使える報告の例
「◯号室の◯◯さんです。明後日に転院予定の方です。14時の体温が38.5℃で、いつもは36℃台です。脈拍110、呼吸数24、SpO2は93%で、いつもは97%です。痰が増えて黄色く、吸引で多くひけます。尿は濃く、においがあります。下痢はありません。診察をお願いします」
報告のあと、医師から検査の指示が出たら、痰・尿・血液などの検体をとる流れになります。
転院を延期するかどうかは、医師が判断します。延期になった場合は、ご家族や転院先への連絡も必要になるので、地域連携室とも早めに情報を共有しましょう。
熱が出たときの流れ(ざっくり)
- 測り直す・ほかのバイタルサインも見る
- 肺・尿・お腹の3つを観察する
- 「いつもの値」と比べて、医師に報告する
- 指示に沿って、検体(痰・尿・血液など)をとる
- 転院が延期になるなら、地域連携室・ご家族と共有する
⑦しーちゃんの本音|「なんで今?」と思っても

正直、「なんで今なの……」って思うよ。
ご家族とも話して、書類もそろえて、やっと送り出せるところだったんだから。

しーちゃんでも、そう思うんですね。

思う。でもね、その熱は患者さんの体からのサインなの。
肺なのか、おしっこなのか、お腹なのか。不思議で片づけずに、原因を探すのが私たちの仕事。

口腔ケア、頭を上げること、陰部洗浄。どれも地味だけど、転院の日を守るのは、そういう毎日のケアなんだと、あらためて感じたよ。
よくある質問
Q. 入院中の患者さんが熱を出したら、最初に何を疑う?
A. まずは、誤嚥性肺炎・尿路感染症・腸炎の3つです。痰の量や色、尿の色やにおい、下痢の有無を見て、医師に報告しましょう。3つで見つからないときは、点滴などの管からの感染や、床ずれ、薬による熱なども考えます。
Q. 麻痺がある人の体温は、どちらのわきで測る?
A. 麻痺のない側で、いつも同じ側で測るのが基本です。麻痺のある側では、正しく測れないことがあります。施設の手順も確認してください。
Q. 血液培養は、なぜとるの?
A. 血液の中に細菌が入っていないかを調べて、熱の原因や、使う抗菌薬を決めるためです。2か所から2セットとるのが一般的で、抗菌薬を始める前にとるのが望ましいとされています。
Q. 転院前に熱が出たら、転院は延期になる?
A. 延期になることがありますが、決めるのは医師です。熱の原因や全身の状態、転院先の受け入れによって変わります。延期になったら、地域連携室やご家族と早めに情報を共有しましょう。
まとめ|転院前の熱は「不思議」で終わらせない
✅ 転院前の患者さんと、院内の発熱のチェックリスト
- □ 寝たきりの人は、毎日、誤嚥と尿路感染のリスクがあると知っている
- □ 熱が出たら、まず測り方を確かめている
- □ 脈拍・呼吸数・SpO2も一緒に見ている
- □ 口腔ケアと吸引を、ていねいに続けている
- □ ベッドの頭側を上げて、平らに寝かせたままにしていない
- □ 尿の色・にごり・においを見ている
- □ 陰部洗浄で、清潔を保っている
- □ 院内の発熱は「肺・尿・お腹」の3つから考えている
- □ 痰・尿・便の検査と、血液培養の意味が分かっている
- □ 「いつもの値」と比べて報告している
- □ 転院が延期になったら、地域連携室と共有している

転院の日まで、患者さんはあなたの受け持ちだよ。
最後の日まで、口の中も、おしっこも、ていねいに見てあげてね。その積み重ねが、患者さんを次の場所へ送り出す力になるから。応援してるよ!

「なんで今?」って思っても、原因を探すのが看護なんですね。明日から、転院前の患者さんこそ、口腔ケアと陰部洗浄をていねいにやります。
ありがとうございます、しーちゃん!
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