「便が出た」のに出ていない?|夜勤で5回呼ばれた話と、おなら(排ガス)のしくみを現役ナースが解説

夜勤の病室でナースコールに向かう看護師のイラスト。「便が出た」のに出ていない?夜勤で5回呼ばれた話と、おならのしくみ ナース1年目のよりどころ

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はじめにお読みください

この記事は、私が夜勤で経験したことと、体のしくみの一般的な説明をまとめたものです。腹痛・吐き気・嘔吐・強いお腹の張りがあるとき、何日も便が出ていないときは、ガスだと決めつけずに先輩・医師へ報告してください。下剤・浣腸・摘便などの排便のケアは、医師の指示と施設の手順に従ってください。

「ナースコールで行ったのに、おむつはきれいだった」
「1時間後にまた『出た』。開けてみると、やっぱり出ていない」
「正直『またか』と思ってしまう自分が、ちょっといやになる」

——その「またか」は、あなたが冷たいからではありません。夜勤の人手の少なさと、体のしくみが重なって起きていることです。

今回は、私が夜勤で同じ患者さんに5回呼ばれて、5回とも便が出ていなかった話をします。そして、その正体だった「おなら(排ガス)」のしくみを、なるべくかんたんにまとめました。

みらいちゃん
みらいちゃん

しーちゃん、昨日の夜勤で、同じ患者さんに何回も「便が出た」って呼ばれたんです。

でも、見に行くと出てなくて……。

しーちゃん
しーちゃん

あるある。私なんて、一晩で5回だったよ。

5回見に行って、5回ともおむつはきれいだった。

みらいちゃん
みらいちゃん

5回も!? それ、どうしたんですか……?

しーちゃん
しーちゃん

正直、途中から心の中で「またか」って思ってた。

でもね、あれはほとんど「おなら」だったんだと思う。今日は、出てないのに「出た」と感じる体のしくみと、何度も呼ばれる夜にどう向き合うかを、一緒に考えよう。

📌 この記事でわかること

  • 夜勤で5回呼ばれて、5回とも便が出ていなかった話
  • 出ていないのに「出た」と感じるしくみ(直腸のセンサー)
  • おなら(排ガス)はどこから来て、何でできているのか
  • 寝たきりの人ほど、ガスと便意に悩みやすい理由
  • 何度も続くときに疑ってほしいこと(便秘・便のつまり)
  • 「またか」と思ってしまう夜の考え方と、そのまま使える声かけ

①夜勤の1時間おきのナースコール|「便が出たから、おむつを替えてほしい」

夜勤で、消灯して患者さんが眠ったあとの時間帯の話です。

ある寝たきりの患者さんから、ナースコールがありました。「便が出たから、おむつを替えてほしい」。

部屋に行って、おむつを開けてみます。——出ていませんでした。

おならが出ると、便が出たような感じがすることがあります。「ガスだったのかな」と思って、「今は出ていませんでしたよ」と伝えて部屋を出ました。

1時間後。また同じ部屋からナースコールです。「便が出た」。

ほかの仕事を止めて見に行くと、また出ていません。「またガスかな」「寝たきりだし、そういうこともあるよね」。そう自分に言い聞かせて、部屋を出ました。

そして、また1時間後。

これが一晩で5回ほどくり返されました。5回とも、おむつはきれいなままでした。

しーちゃん
しーちゃん

夜中の1時間って、ほかの患者さんの点滴や体位変換、見回りでぎっしりなんだよね。

そこに、出ていないおむつの確認が5回。ナースコールが鳴るたびに、足が少しずつ重くなっていったのを覚えてる。

みらいちゃん
みらいちゃん

私も昨日、3回目で「また……?」って思っちゃいました。

②出ていないのに「出た」と感じるのはなぜ?|直腸のセンサーのしくみ

先に答えを言うと、腸のセンサーは「中身が何か」ではなく「ふくらんだかどうか」を感じているからです。

便もガスも、最後は直腸(肛門のすぐ手前にある、腸の出口の部分)に届きます。直腸の壁には、ふくらみを感じるセンサーがあります。中身が届いて壁がふくらむと、脳に「出したい」という信号が送られます。

つまり、ガスでも直腸がふくらめば、体は「何か来た」と感じるんです。

本当は、肛門の入り口のあたりで「これはガスか、便か」を見分けるしくみもあります。ここの粘膜はとても敏感で、中身が固いのか、水っぽいのか、空気なのかを感じ分けています。

ただ、この見分けは、年齢を重ねたり、寝たきりでいたりすると、あいまいになりやすいと言われています。

たとえば、あなたにもこんな経験はありませんか。「出そう」と思ってトイレに入ったのに、おならしか出なかった。私は何度もあります。

元気な私たちでも間違えるのだから、寝たままで、おむつの中を自分で確かめられない患者さんなら、なおさらです。

「出た」と感じるまでの流れ

  1. ガスや便が、直腸に届く
  2. 直腸の壁がふくらみ、センサーが反応する
  3. 脳に「出したい」「出た」という信号が届く

直腸のセンサーは、ガスと便を区別していない。見分けるのは肛門の入り口の役目で、ここは寝たきりや高齢だとあいまいになりやすい。

しーちゃん
しーちゃん

患者さんは、うそをついているわけじゃないの。体は本当に「来た」と言ってる。

そこが分かっていると、5回目でも、声のトーンが変わるよ。

③おなら(排ガス)はどこから来る?|正体は3つ

腸の中のガスは、大きく3つのところからやってきます。

1.口から飲み込んだ空気

食事や会話のとき、私たちは知らないうちに空気を飲み込んでいます。口を開けたまま呼吸している人や、早食いの人は多くなりがちです。眠っている患者さんが口を開けて呼吸している場面は、病棟でもよく見かけますよね。

2.大腸の細菌がつくるガス

大腸には、たくさんの腸内細菌がすんでいます。消化しきれなかった食べ物の残りを、細菌が分解(発酵)するときにガスが出ます。便が腸に長くとどまるほど、この発酵は進みます。

3.血液から腸に移ってくるガス

血液の中に溶けているガスの一部が、腸の中に移ってくることもあります。量としては、1と2のほうが中心です。

おならのほとんどは、窒素や二酸化炭素、水素、メタンといった、においのない気体です。においのもとは、硫化水素などのごくわずかな成分なんです。

量は、健康な大人で1日におよそ0.5〜1.5L、回数は10〜20回ほどと言われています。500mLのペットボトルで1〜3本分のガスが、毎日おなかを通っている計算です。

おなら(排ガス)のまとめ

  • どこから?:①飲み込んだ空気 ②大腸の細菌がつくるガス ③血液から移るガス
  • 何でできている?:ほとんどが、においのない気体(窒素・二酸化炭素・水素・メタンなど)
  • においのもと:硫化水素など、ごくわずかな成分
  • 量と回数:1日およそ0.5〜1.5L、10〜20回ほど
みらいちゃん
みらいちゃん

おならって、毎日そんなに出てるんですね……!

④寝たきりの人ほど、ガスと便意に悩みやすい3つの理由

あの夜の患者さんは、寝たきりの方でした。寝たきりの人は、ガスと便意に悩みやすい条件がそろっています。

1.動かないと、腸も動きにくい

体を動かさないと、腸が便を先へ送る動き(ぜん動)が弱くなります。便がゆっくりしか進まないので、腸の中に長くとどまります。とどまる時間が長いほど、細菌の発酵が進み、ガスが増えます。

2.寝た姿勢は、出しにくい姿勢

座ると、直腸から肛門への通り道がまっすぐに近づき、おなかに力も入れやすくなります。寝たままだと、それができません。「出したいのに出しきれない」が起きやすい姿勢なんです。

3.「出したい」がずっと頭から離れない

便が出ない日が続くと、「出したい」という感覚が、ずっと残ります。そうなると、少しのガスにも体が敏感に反応してしまう。

あの患者さんも、出したい感覚がずっとあって、余計にそこを意識していたのかもしれない。今ふり返ると、私はそう感じています。

しーちゃん
しーちゃん

おむつの中って、自分では確かめられないでしょう。だから「出たかも」が気になって、気になって、眠れない。

ナースコールの回数は、その不安の回数でもあったんだと思う。

⑤何度も続くときは「便秘のサイン」かもしれない

ここは大事なところです。「出た」と言うのに出ていない、が何度も続くときは、ただのガスと決めつけないでください。

便秘が続いていたり、直腸に硬い便がつまっていたりすると、強い便意がくり返し起きることがあります。つまった便のすき間から、水っぽい便が少しずつもれてくることもあります。

おむつを見るついでに、次のことも確かめてみてください。

何度も便意を訴えるときに見るところ

  • 最後に便が出たのはいつか(記録をさかのぼる)
  • お腹の張り:ふくらみ・かたさが、前の勤務より強くないか
  • 腸の音(腸ぜん動音):聞こえるか、いつもと違わないか
  • 吐き気・嘔吐・腹痛はないか
  • おむつに、少量の水っぽい便のしみがないか

※腹痛・吐き気・嘔吐・強いお腹の張りがあるときは、腸閉塞(イレウス:腸の中身が先へ進まなくなった状態)のこともあります。すぐに先輩・医師へ報告してください。

報告するときは、「前の様子」と「今の様子」を並べると伝わりやすくなります。たとえば、こんなふうに。

そのまま使える報告の例

「◯号室の◯◯さんです。0時から1時間おきに便意の訴えが5回ありましたが、排便はありません。最終排便は◯日前です。お腹の張りは昨日より強く、吐き気と腹痛はありません。朝の排便のケアについて相談させてください」

しーちゃん
しーちゃん

「ガスでした」で終わらせずに、「最後に出たの、いつだっけ」を確かめる。

5回のナースコールは、体からのサインだったのかもしれないからね。

⑥「またか」と思ってしまうのは、あなたが冷たいからじゃない

忙しい夜勤の中で、出ていないおむつを何回も見に行く。正直、つらいです。

「できれば呼ばないでほしい」。そんな気持ちが、頭をよぎることもあると思います。患者さんを嫌っているわけではないのに、です。私もそうでした。

これは、あなたの性格の問題ではありません。夜勤は、少ない人数でたくさんの患者さんを見ています。おむつの確認は1回数分でも、手袋をつけて、カーテンを閉めて、体の向きを変えて、声をかけて、記録する。そのあいだ、ほかの仕事は止まります。同じことを何回もくり返せば、誰だって疲れます。

それに、つらかったのは、きっと私だけではありませんでした。出したいのに出ない。ガスもすっきり出ない。お腹が張って眠れない。患者さんにとっても、長い夜だったはずです。

「出ていなかった」は、無駄足ではありません。見に行って「今のはガスでしたよ」と伝えるところまでが、看護です。

しーちゃん
しーちゃん

何回目でも、見に行く。それがプロだと、私は思ってる。

でも、つらいと思う自分を責めなくていいよ。つらいと思いながら、見に行けばいいの。

みらいちゃん
みらいちゃん

つらいって思っていいんだ……。なんだか、少しほっとしました。

⑦何度も呼ばれる夜にできる5つのこと

「何回でも見に行く」を続けるために、私が意識していることをまとめます。

何度も呼ばれる夜にできること

  1. 見たことを、そのまま伝える:「おむつ、きれいでしたよ」と毎回はっきり伝える。安心につながります
  2. しくみを一言で添える:「ガスでも、便が出たように感じることがあるんですよ」
  3. 楽になる工夫を探す:体の向きを変える、お腹を温める、おへその周りを「の」の字にさする
  4. 記録と申し送りに残す:時間・回数・排便の有無・お腹の様子。日勤で排便のケアを相談するきっかけになります
  5. 一人で抱えない:同じ夜勤のメンバーに「◯号室、1時間おきに呼ばれてる」と共有しておく

※お腹の手術のあとなど、お腹を温めたりさすったりしてはいけない人もいます。必ず先輩・医師に確認してから行ってください。

声かけは、こんなふうにしています。

そのまま使える声かけ

  • 「呼んでくれてありがとうございます。今は出ていませんでした」
  • 「ガスが出ると、便が出たように感じることがあるんですよ」
  • 「お腹、張って苦しくないですか?」
  • 「また出た感じがしたら、遠慮なく呼んでくださいね」
しーちゃん
しーちゃん

最後の「遠慮なく呼んでくださいね」は、5回目でも言うようにしてる。

本当に出ていたときに呼んでもらえないほうが、お尻の皮膚にとっても、患者さんの気持ちにとっても、ずっとつらいから。

⑧しーちゃんの本音|5回目のナースコールで思ったこと

しーちゃん
しーちゃん

5回目のナースコールが鳴ったとき、正直、「どうせまた出てない」って思ったの。

看護師なのにそんなふうに思うなんて、って、自分に少しがっかりもした。

みらいちゃん
みらいちゃん

しーちゃんでも、そう思うんですね……。

しーちゃん
しーちゃん

思うよ。出ていないものを何回も見るのは、やっぱりつらい。

でも、患者さんが「見てほしい」と言うなら、何回でも見る。それが看護師として正しい行動だと、私は思ってる。

しーちゃん
しーちゃん

それに、あの夜に眠れなかったのは、私より患者さんのほうだったのかもしれない。

夜勤の忙しい中でも、そこは真摯に向き合おう。私も、一緒に頑張るからね。

よくある質問

Q. 何度も呼ばれるとき、「出ていないので、呼ばなくて大丈夫ですよ」と言っていい?

A. おすすめしません。そう言われると、患者さんは本当に出たときも呼びにくくなります。出たまま時間がたつと、おむつかぶれなど皮膚のトラブルにつながります。「今は出ていませんでした。また感じたら呼んでくださいね」と伝えるほうが安心です。

Q. おならの回数が多いのは、病気のサイン?

A. 1日10〜20回ほどは、ふつうの範囲と言われています。ただ、急に増えた、お腹の張りや痛みがある、便が何日も出ていないといったときは、別の原因が隠れていることがあります。先輩・医師に報告してください。

Q. 寝たきりの患者さんのガスを出しやすくする方法は?

A. 体の向きを変える、お腹を温める、おへその周りを「の」の字にさする、といった方法があります。座れる方なら、ポータブルトイレで座ってみるのも一つです。どれも、お腹の手術のあとなど向かない人がいるので、先輩・医師に確認してから行ってください。

Q. 「便が出た」と言われて出ていなかったとき、記録はどう書く?

A. 時間、訴えの内容、排便の有無、ガスが出ていたか、お腹の様子を書きます。たとえば「2:00 便意の訴えあり。おむつ内に排便なし。排ガスあり。腹部の張りは軽度」。回数が多い夜は、申し送りで回数もまとめて伝えましょう。

まとめ|「出ていなかった」も、看護の一部

✅ 何度も「便が出た」と呼ばれる夜のチェックリスト

  • □ 直腸のセンサーは、ガスと便を区別していないと知っている
  • □ 患者さんはうそをついているのではない、と分かっている
  • □ おむつを見たら、結果をそのまま伝えている
  • □ 「ガスでも出たように感じる」と一言添えている
  • □ 最後に便が出た日を確かめている
  • □ お腹の張り・腸の音・吐き気・腹痛を見ている
  • □ 腹痛・嘔吐・強い張りがあれば、すぐ報告している
  • □ 回数・時間・お腹の様子を記録している
  • □ 「また感じたら呼んでくださいね」と伝えている
  • □ 夜勤のメンバーに共有して、一人で抱えていない
  • □ 「つらい」と思う自分を責めていない
しーちゃん
しーちゃん

「出ていなかった」に何回付き合ったかは、記録の外では誰にも見えないかもしれない。

でも、その1回1回が、患者さんの「呼んでも大丈夫」をつくってる。今夜も、あなたのペースで見に行ってね。応援してるよ!

みらいちゃん
みらいちゃん

「出ていなかった」も看護なんですね。今夜の夜勤から、「ガスでしたよ」ってちゃんと伝えて、最後に出た日も確かめます。

ありがとうございます、しーちゃん!

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