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⚠️ はじめに(大切なお願い)
特定行為は、医師が作成した手順書に基づいて実施するものです。研修を修了した看護師が、決められた病状の範囲内で行います。看護師が自己判断で自由に行える行為ではありません。
また本記事は、実践者の経験を共有するものであり、手技の手順書ではありません。実際の判断・実施は、必ず自施設の基準と医師の指示に従ってください。
「気管チューブの位置調整」——特定行為のひとつです。
実践編の第1回は、この行為を取り上げます。でも、新人看護師のあなたに読んでほしい理由があります。この行為の”前段階”には、新人でもできる観察がたくさんあるから。胸部レントゲンの見方、カフ漏れ、片肺挿管——学べば、あなたのアセスメントの幅は確実に広がります(特定行為シリーズ実践編①。序章から読むのもおすすめです)。

しーちゃん、いよいよ実際の特定行為の話ですね!最初は「気管チューブの位置調整」…正直、新人の私には遠い世界に感じます。

そう思うよね。でもね、この行為の手前にある観察は、全部あなたにもできることなの。むしろそこを知ってほしくて、最初にこの行為を選んだんだ。

私にもできること、ですか?

うん。レントゲンの見方、カフ漏れの音、片肺挿管のサイン。ぜんぶ新人のうちから見られるものだよ。順番に話すね。
📌 この記事でわかること
- 気管チューブの位置調整とは何をする行為か
- どんな患者さんに使われる場面か(救急外来・ICU・手術室など)
- 新人でもできる観察|胸部レントゲン・カフ漏れ・片肺挿管
- 喉頭展開に挑戦して「無理」と判断した正直な話
- 特定行為でできると、患者さんに何が起こるか(時短の価値)
- 学ぶと医師と話が合うようになる、という副産物
気管チューブの位置調整とは?|どんな場面で必要になるか
気管チューブ(気管挿管に使う管)は、救急外来で気管挿管された事例、ICUや救急病棟で挿管された症例で使われることが多いです。手術室でも多く使われます。
この管は、深すぎても浅すぎてもいけません。深すぎれば片方の肺にだけ入ってしまい(片肺挿管)、浅すぎれば抜けてしまう危険がある。だから「適切な位置にあるか」を確認し、ズレていれば調整する必要があります。
この位置調整が、特定行為のひとつです。

チューブの位置って、患者さんの首の動きや体位変換でも変わるの。だから「入れたら終わり」じゃなくて、見続ける必要があるんだよ。
新人でもできる観察①|胸部レントゲンを見られるようになる
位置の確認は、施設によって若干の違いはありますが、基本的には胸部レントゲンを撮ったものを確認して、レントゲン上で「浅い」「深い」を判断します。
つまりこの研修では、胸部レントゲン上で気管・気管分岐部・気管チューブの先端の見つけ方を学習することになります。
🩻 レントゲンで見ているもの(イメージ)
- 気管がどこに写っているか
- 気管分岐部(気管が左右に分かれる場所)はどこか
- チューブの先端が、分岐部からどのくらい手前にあるか
※適切な位置の基準は施設・患者さんにより異なります。自施設の基準を確認してください。

ここ、新人さんにいちばん伝えたいところ。レントゲンを見るのが苦手な看護師さんって、すごく多いと思うの。
でも「チューブの先端はどこ?」「分岐部はどこ?」って見るポイントを1つ決めて見るだけで、レントゲンは急に読めるものになる。この学習の機会に学べると、アセスメントの幅が広がると思うよ。

レントゲン、いつも「なんとなく白いな」って見てました…。見るポイントを決めればいいんですね!
挿管されている患者さんを受け持ったら、医師が撮ったレントゲンを一緒に見せてもらうところから始めてみてください。「チューブの先端ってどこですか?」の一言で十分です(他職種に聞く姿勢の話にもつながります)。
新人でもできる観察②|カフ漏れ・変な音・片肺挿管
この学習をしたことで、私はチューブまわりの「異変のサイン」に注意が払えるようになりました。ここも新人さんがすぐ活かせる部分です。
👂 気管チューブで気をつけたいサイン
- カフ漏れ…空気が漏れている(カフ圧の低下、換気量の変化など)
- 咽頭部からちょっと変な音がする…漏れやチューブの位置の異常を疑うサイン
- 片肺挿管になっている…チューブが深すぎて片方の肺にだけ入っている状態
片肺挿管は「呼吸音の左右差」で気づける
片肺挿管が起きると、入っていない側の肺に空気が届かなくなります。だから聴診で呼吸音の左右差が出る。これは新人さんでも、意識すれば気づけるサインです。
呼吸のフィジカル(呼吸回数・胸郭の挙上・左右差・SpO2)は、誤嚥性肺炎の情報収集でも書いた基本の観察と同じです。基本の観察が、そのまま挿管患者さんの安全確認になる——ここが今日いちばん伝えたいことかもしれません。

「特定行為ができないと何もできない」なんてこと、全然ないの。異変に気づいて報告する——それができれば、あなたはもう患者さんを守ってる。

呼吸音の左右差…!明日から意識して聴きます。
正直な話|喉頭展開に挑戦して「無理だ」と判断した日
ここからは、私の正直な体験を。
私が特定行為研修を修了したときは、喉頭展開の練習もしました。ドラマでもよく見かける、患者さんの口の中に金属のL字のものを入れて、舌を持ち上げて気管の穴を見つける——あの手技です。
特定行為として挿管することはできませんが、入っている管を喉頭展開して直接見に行くことは行いました。直接見て、チューブについている「声門マーカー」という線が適切な位置にあるかを確認する作業です。

実際の患者さんでやらせていただいたことがあるんだけどね——めっちゃ難しかった。ちょっと研修したからってやれるもんじゃなかったの。
歯が折れちゃいそうだったから、指導医と相談してやめた。あれは、正しい判断だったと思ってる。

「やめた」って言えるの、すごいです…。

できることを増やすのが研修だけど、「今の自分にはできない」と判断するのも技術のうち。無理して患者さんを傷つけたら本末転倒だからね。
実際にやっているのは「レントゲンを見て、入れるか抜くか」
そんなわけで、基本的には胸部レントゲンを見て、チューブが浅ければ奥に入れて、深ければ抜く——という作業で、適切な位置に調整します。
シンプルに聞こえますが、ここに大きな価値があります。
この行為の価値|「医師を捕まえる時間」がなくなる
従来なら、チューブの位置を変えたいと思っても——医師を捕まえなければなりませんでした。でも医師は基本的に忙しい。第2弾で書いたとおり、医師には医師の調整された1日があります。
それが、看護師同士でできるようになる。これはかなりの時短です。
⏱ 位置調整がタイムリーにできると
- 医師を探して、連絡して、来てもらうまでの待ち時間がなくなる
- 患者さんにとっては、変な位置に入ったものが早く直る
- 不適切な位置による合併症(片肺挿管など)の時間を短くできる

序章で書いた「わかってるのにできない」もどかしさ——まさにこれが解消される場面なの。ズレてると分かってるのに待つ、あの時間がなくなる。
副産物|医師と「話が合う」ようになった
もうひとつ、思わぬ収穫がありました。
この学習で気管チューブの構造にも詳しくなった結果——医師と話が合うようになり、気管チューブ関連で医師とコミュニケーションが取りやすくなったんです。
これは第4弾で書いた話とまったく同じ構造でした。相手の使う言葉を持つと、会話が成立する。「なんか変です」ではなく「カフ漏れの音がして、換気量が落ちています」と言えれば、医師はすぐ動けます。

知識って、コミュニケーションの通貨みたいなものなの。同じ言葉を持ってると、話が一気に早くなるんだよ。
新人のあなたが、今日からできること
特定行為の研修に行かなくても、今日からできることをまとめます。
✅ 挿管患者さんを受け持ったら(新人版チェック)
- □ 胸部レントゲンを見せてもらう——「チューブの先端はどこですか?」と聞くところから
- □ 呼吸音の左右差を聴く(片肺挿管のサイン)
- □ カフ圧・カフ漏れの音に注意を払う
- □ 咽頭部から変な音がしないか
- □ 体位変換や移動の前後で呼吸状態を確認(位置がズレやすい)
- □ 異変に気づいたらすぐ報告(判断は先輩・医師と)

この6つ、全部あなたにできること。特定行為は”その先”にあるだけで、患者さんを守る観察は今日から始まってるからね。

遠い世界だと思ってたけど、手前のところは全部つながってるんですね。レントゲン、明日見せてもらいます!
まとめ|学ぶことは、患者さんの安全に直結する
この行為を学んで、私はあらためて思いました。
学習することは本当に、患者さんの管理の質が上がったり、理解が深まり、安全で安心なケアにつながる——と。特定行為の資格そのものより、その過程で得た「見る目」の方が、日々の看護を変えてくれた気がしています。
✅ この記事のまとめ
- 気管チューブの位置調整は、救急外来・ICU・救急病棟・手術室などの挿管患者さんが対象
- 基本は胸部レントゲンで浅い/深いを確認し、入れるか抜くかで調整
- 研修では気管・分岐部・チューブ先端のレントゲンの見方を学べる=アセスメントの幅が広がる
- 喉頭展開も練習したが、実際は難しく、指導医と相談して中止した(判断も技術)
- 看護師同士でできる=医師を待つ時間がなくなり、患者さんにとって早い
- カフ漏れ・変な音・片肺挿管に気づけるようになった
- 構造に詳しくなり、医師と話が合うようになった

実践編、これからひとつずつ書いていくね。どの行為にも必ず「新人のあなたにできる手前の観察」があるから、そこを一緒に見つけていこう。
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📚 あわせて読みたい|特定行為シリーズ
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