意識レベルの変化は「いつもと違う」で気づく|昨日まで箸で食べていた人が食べない朝と、JCS・GCSの見かたを現役ナースが解説

朝の病室で、朝ごはんのトレーの前の患者さんに看護師が真剣な表情で声をかけるイラスト。意識レベルの変化は「いつもと違う」で気づく/JCS・GCSの見かた ナース1年目のよりどころ

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はじめにお読みください

この記事は、私が病棟で経験したことと、意識レベルの見かたの一般的な説明をまとめたものです。個人が特定されないよう、年齢・病名・経過などはぼかしています。脳卒中が疑われるときは、迷わずすぐに医師・先輩へ報告してください。評価や対応は、施設の手順に従ってください。

「意識レベルが下がったら報告して、と言われるけど、どう気づけばいいの?」
「JCSやGCSの点数をつけるのに、自信がない」
「なんとなくおかしい、だけで報告していいのかな」

——意識レベルの変化は、点数より先に「昨日できたことが、今日はできない」で気づけることがあります。

今回は、昨日まで自分でお箸を使って食べていた患者さんが、朝ごはんを食べなかった日の話と、意識レベル(JCS・GCS)の見かたをまとめました。

みらいちゃん
みらいちゃん

しーちゃん、「意識レベルが変わったらすぐ報告」って言われるんですけど、正直、どこで気づけばいいのか分からなくて……。

しーちゃん
しーちゃん

点数で考えようとすると、むずかしく感じるよね。

私が「これは絶対おかしい」って気づいたのは、朝ごはんの場面だったの。

みらいちゃん
みらいちゃん

朝ごはん、ですか?

しーちゃん
しーちゃん

そう。昨日まで自分で食べていた人が、お箸を持てなかった。

今日はその日の話と、JCS・GCSの見かたを、一緒に整理しよう。

📌 この記事でわかること

  • 昨日まで自分で食べていた人が、朝ごはんを食べなかった日の話
  • 「あれ?」から「絶対おかしい」に変わった瞬間
  • 脳梗塞を疑ったときに、すぐ確かめること
  • MRIで脳梗塞が見つからなかった、そのあとの経過
  • 「いつもと違う」こそ意識レベルの変化だということ
  • 【解説】JCSとGCSの見かた

①昨日の夜まで、自分でお箸を使って食べていた

その患者さんは、前の日の夜まで、ふつうに会話ができていました。

ご飯は、ベッドの上でこちらがセッティングをします。お箸やスプーンがどこにあるかを伝えれば、あとは自分でお箸を持って、ご飯を食べることができていました。

ここが、あとで大事になります。「昨日の夜は、自分でお箸を使って食べられた」。この一文が、翌朝の変化に気づく物差しになりました。

②朝のラウンドで「あれ?」|言葉が出ていない気がする

翌日の朝、ラウンドで部屋に行きました。

声をかけてみると、「あれ、なんだか言葉が出ていないような気がするな」。そう、ちょっと思いました。

でも、その時点では、はっきりおかしいとは言い切れません。寝起きだからかな、とも思える程度です。もうすぐ朝ごはんの時間だったので、まずはご飯のセッティングをしてみることにしました。

しーちゃん
しーちゃん

この「ちょっと思った」を、流さないでほしいの。

小さな違和感は、あとで大きな手がかりになることがあるから。

③朝ごはんで確信した|お箸が持てない・食べない・ぼーっとしている

ご飯をセッティングすると——案の定でした。

ご飯を、ご飯として認識していないようでした。お箸を、まず持てない。言葉が出ない。お箸を使えない。ご飯を食べようとしない。ぼーっとしている。

昨日の夜は、自分で右手にお箸を持って食べていた人です。それが、今朝はまったくできない。「いや、これは絶対におかしい」。そう確信しました。

みらいちゃん
みらいちゃん

昨日できていたことと比べたから、はっきり分かったんですね。

④すぐに確かめたこと|脳梗塞(太い血管の詰まり)を疑って

まず頭に浮かんだのは、脳梗塞です。とくに、脳の太い血管が詰まっていたら、カテーテルで血栓をとる治療(血栓回収)ができる可能性があります。この治療は、時間との勝負です。

そこで、ほかの看護師に相談しながら、次のようなことを確かめました。

脳卒中を疑ったときに確かめること

  • 目の向き:両目が同じ方向にかたよっていないか(共同偏視)
  • 瞳孔:左右の大きさが違わないか、光への反応はあるか
  • 手足の動き:両腕を前に上げてもらい、片方が下がってこないか
  • 言葉:言葉が出るか、こちらの言うことが分かるか(失語)
  • 顔:口の片側が下がっていないか
  • 最後に普段どおりだった時刻:治療を選ぶうえで、とても大事な情報
  • 血糖:低血糖でも、脳卒中に似た症状が出ることがある

※評価の方法や順番は、施設の手順に従ってください。確かめるより先に、まず人を呼んでかまいません。

でも、いちばん明らかだったのは、やはり「昨日できたことが、今日はできない」ことでした。すぐに医師を呼んで、MRIの検査をすることになりました。

医師に伝えるときは、こんなふうに「昨日」と「今」を並べると伝わりやすくなります。

そのまま使える報告の例

「◯号室の◯◯さんです。昨日の夜◯時の夕食までは、自分で右手にお箸を持って食べられて、会話もふつうにできていました。今朝◯時のラウンドで言葉が出にくく、朝食ではお箸を持てず、食べようとしません。ぼーっとしています。両腕を上げると◯◯、瞳孔は◯◯、血糖は◯◯です。脳卒中の可能性があると思うので、すぐ診察をお願いします」

しーちゃん
しーちゃん

「最後に普段どおりだったのは、いつ?」は、医師が必ず聞くこと。

記録やご飯の様子から、すぐに答えられるようにしておくと、治療が早く始められるよ。

⑤MRIでは、脳梗塞は見つからなかった|てんかんだった

MRIの検査をしたところ、脳梗塞は見つかりませんでした。

医師の判断は、てんかんの発作だったのではないか、というものでした。抗てんかん薬を使って、様子を見ることになりました。

2〜3日様子を見ているうちに、3〜4日ほどたったころでしょうか。急に体が動き始めて、自分で動けるようになりました。症状が、おさまってきたのだと思います。

その直後は、また不穏な様子もありました。でも、そこからさらに3〜4日すると、気持ちも落ち着いてきたのか、ふつうに会話ができる方に戻っていきました。

てんかんというと、全身がけいれんする姿を思い浮かべるかもしれません。でも、高齢の方のてんかんは、けいれんを伴わないことが多いとされています。ぼーっとする、言葉が出ない、反応が鈍い。そんな「意識の変化」だけが出ることもあるんです。

みらいちゃん
みらいちゃん

けいれんがなくても、てんかんのことがあるんですね……!

⑥「いつもと違う」こそ、意識レベルの変化

この経験で、あらためて思いました。

意識レベルの変化というと、呼んでも目を開けない、痛みに反応しない、といった場面を想像しがちです。でも、実際の病棟で最初に出会うのは、もっと小さな変化です。

昨日できたことが、今日はできない。言葉が出ない。お箸が持てない。ぼーっとしている。こうした「いつもと違う」こそが、意識レベルの変化の具体例なんだと思います。

そして、それに気づけるのは、前の日の様子を知っている人だけです。だからこそ、日々の記録や申し送りで「何ができていたか」を残しておくことが、とても大事になります。

「いつもと違う」に気づくための記録

  • 食事:自分で食べられたか、どちらの手で、どの道具で
  • 会話:どんな話ができたか、言葉はスムーズか
  • 動き:寝返り、起き上がり、手足の動き
  • 表情:笑顔、反応の速さ

点数だけでなく、「何ができていたか」を書いておくと、次の勤務の人が変化に気づけます。

⑦【解説】意識レベルの見かた|JCSとGCS

意識レベルを伝えるときは、JCSやGCSという共通の物差しを使います。数字にすることで、ほかの看護師や医師と、同じものさしで比べられるようになります。

JCS(ジャパン・コーマ・スケール)

目を開けるかどうかで、大きく3つに分けます。数字が大きいほど、意識レベルが低いことを表します。

段階状態
0意識清明
Ⅰ 刺激しなくても目を開けている1:だいたい清明だが、今ひとつはっきりしない
2:時間や場所が分からない(見当識障害)
3:自分の名前・生年月日が言えない
Ⅱ 刺激すると目を開ける10:ふつうの呼びかけで、すぐ目を開ける
20:大きな声や、体をゆさぶると目を開ける
30:痛みを加えながら呼びかけると、かろうじて目を開ける
Ⅲ 刺激しても目を開けない100:痛みに対して、払いのけるような動作をする
200:痛みに対して、少し手足を動かしたり顔をしかめたりする
300:痛みに反応しない

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)

「目を開ける(E)」「言葉(V)」「動き(M)」の3つを点数にして、合計します。15点が満点で、点数が低いほど意識レベルが低いことを表します。

項目点数
E:目を開ける4:自分から開けている/3:呼びかけで開ける/2:痛みで開ける/1:開けない
V:言葉5:時間や場所が分かる会話/4:混乱した会話/3:場にそぐわない言葉/2:意味のない声/1:声が出ない
M:動き6:指示に従う/5:痛いところに手を持っていく/4:痛みから手足を引っこめる/3:手足を異常に曲げる/2:手足を異常に伸ばす/1:動かない

一つ、注意したいことがあります。今回の方のように失語(言葉が出ない・理解できない)があると、GCSの「V(言葉)」は低くなります。でも、それは意識が下がっているせいとは限りません。言葉の問題なのか、意識の問題なのかを分けて考え、記録にも「失語あり」と残しておきましょう。

しーちゃん
しーちゃん

点数をつけるのに迷ったら、点数より先に「昨日と比べてどう違うか」を言葉で伝えればいいの。

点数は、そのあと先輩と一緒につければ大丈夫だよ。

⑧しーちゃんの本音|「絶対おかしい」は、昨日を知っているから言える

しーちゃん
しーちゃん

あの朝、「絶対おかしい」って言えたのは、前の日の夜、その人が自分でお箸を持って食べている姿を知っていたからなの。

みらいちゃん
みらいちゃん

昨日の様子を知っていることが、気づく力になるんですね。

しーちゃん
しーちゃん

そう。結果的に脳梗塞ではなかった。でも、気づいてすぐに動いたことは、間違いじゃなかったと思ってる。

違っていたらよかった、でいいの。「おかしい」と思ったら、迷わず人を呼んでね。

よくある質問

Q. 意識レベルが下がったかも、と思ったら、最初に何をする?

A. まず、一人で判断せずに人を呼びます。そのうえで、呼吸や脈などのバイタルサイン、目の向き、瞳孔、手足の動き、言葉、血糖を確かめます。「最後に普段どおりだった時刻」も、すぐ答えられるようにしておきましょう。

Q. JCSとGCS、どちらを使えばいい?

A. 施設や場面によって決まっていることが多いので、まずは施設のルールに従いましょう。JCSは目を開けるかどうかで素早く分けられ、GCSは目・言葉・動きを細かく見られます。どちらも、前の値と比べることが大切です。

Q. 脳梗塞じゃなかったら、報告しすぎだった?

A. そんなことはありません。脳梗塞は時間との勝負なので、疑ったらすぐに伝えることが正しい行動です。今回のように、結果がてんかんだったとしても、早く気づいて検査につなげたことには大きな意味があります。

Q. 失語と、意識が下がっていることの違いは?

A. 失語は、言葉を話す・理解する働きの問題で、目は開いていて、表情や動きでは反応できることがあります。意識が下がっているときは、目を開ける・反応するといったこと全体が鈍くなります。見分けがむずかしいときも多いので、気づいたことをそのまま医師に伝えましょう。

まとめ|点数より先に「昨日と比べて」

✅ 意識レベルの変化に気づくためのチェックリスト

  • □ 「昨日できたことが、今日できない」に気づける
  • □ 小さな違和感を、流さずに確かめている
  • □ 食事や会話で「何ができたか」を記録に残している
  • □ 脳卒中を疑ったら、まず人を呼んでいる
  • □ 目の向き・瞳孔・腕の動き・言葉・顔を確かめている
  • □ 血糖も確かめている
  • □ 「最後に普段どおりだった時刻」を答えられる
  • □ 報告では「昨日」と「今」を並べて伝えている
  • □ けいれんがなくても、てんかんのことがあると知っている
  • □ JCSとGCSの見かたが分かる
  • □ 失語があるとGCSの言葉の点数が下がると知っている
しーちゃん
しーちゃん

意識レベルの点数をつけるのは、慣れるまでむずかしいよね。

でも、「昨日はこうだったのに、今日は違う」と気づけるのは、毎日患者さんを見ているあなただからこそ。その気づきを、自信を持って伝えてね。応援してるよ!

みらいちゃん
みらいちゃん

点数より先に、昨日と比べることが大事なんですね。明日から、ご飯のときに「何ができたか」も記録に残してみます。

ありがとうございます、しーちゃん!

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