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はじめにお読みください
この記事は、新人看護師向けの一般的な考え方を、現役看護師の体験として書いたものです。急変時の具体的な対応手順・コール体制は施設ごとに異なります。必ず自施設の急変時対応マニュアルと、先輩・医師の指示に従ってください。
「急変に当たったけど、何もできないまま終わった」
「頭が真っ白になって、何が起きてたか思い出せない」
「次にまた当たったらと思うと、夜勤が怖い」
——そのまま、しばらく引きずりますよね。
先に結論をお伝えします。急変の場で、新人が状況を理解できることは、まずありません。だから「理解してから動く」のではなく、「理解できないまま人を呼ぶ」が正解です。この記事では、私が初めての急変で何ひとつできなかった話と、あのときどうすればよかったのかを、そのまま書きます。

しーちゃん、昨日の夜勤で急変があって……私、完全に固まっちゃって。何もできませんでした。

そっか。……あのね、先に言っておくと、私の初めての急変は、患者さんの様子すら覚えていないんだよ。

えっ。覚えてないんですか?

うん。顔も、名前も、そのあとどうなったかも。覚えてるのは「胸骨圧述をしてる誰かの背中」だけ。今日はね、その話をしながら、わからないまま何をすればいいのかを一緒に考えよう。
📌 この記事でわかること
- 急変で「何もできなかった」のは、あなたの能力の問題ではない理由
- 「反応がない」に気づけなかった、私の新人時代の話
- 「あれ?おかしいな」で足が止まってしまう、脳の仕組み
- 新人が急変でやるべき3つと、やらなくていい3つ
- そのまま使える「応援の呼び方」の例文
- いちばんやってはいけない行動(私はやってしまいました)
結論|急変で新人がやることは、たったひとつ
結論から言います。
わからないまま、人を呼ぶ。
これだけです。
「状況を把握してから呼ばう」ではありません。「もう少し見てから呼ばう」でもない。理解できていない、その状態のまま呼ぶ。
順番が逆に感じるかもしれません。でも、これが正解です。
理由はシンプルで——急変の場で、経験の浅い人が状況を理解できることは、まずないからです。理解を待っていたら、待っている時間がまるごと空白になります。
急変で新人に求められていること
- 原因を突き止めること → 求められていません
- 正しく判断すること → 求められていません
- きれいに報告すること → 求められていません
- 人を呼ぶこと → これだけ

「わかってから呼ぶ」って、実はすごく傲慢な発想なんだよね。わからない人がわからないまま呼べる職場のほうが、ずっと安全なんだ。
私の話|初めての急変は、患者さんの顔すら覚えていない
ここから、私の失敗を書きます。
循環器病棟で働いていた頃の、夜勤でした。

患者さんの様子を見に行ったら、反応がなかったの。それで「あれ?おかしいな」とは思ったんだよ。思ったんだけど——その先が、なかった。

その先が、ない……?

「おかしいな」で止まっちゃったの。これが何を意味するのか、まったく理解できてなかった。それで廊下に出て、先輩を探しに行った。

先輩を呼びに。

うん。見つけて「患者さんの様子が変です、反応がないです」って伝えた。そしたら先輩が病室に飛び込んで、大きな声で呼びかけて、こっちを見て言ったの。——「急変! 人を集めて」

……。

私ね、そのとき何を思ったと思う? 「人って、何?」

え、えっ。

誰を呼べばいいのか、何人必要なのか、どこにいるのか。全部わからなかった。とりあえず走って、他の先輩を探した。……で、記憶があるのはそこまで。胸骨圧述をしてるところまでは覚えてる。それ以外は、本当に何も覚えていない。
覚えていないんです。患者さんの顔も、名前も、その方が最終的にどうなったのかも。
「覚えていない」と書くのは、正直かっこ悪い。でも、これが初めての急変のリアルだと思うので、そのまま書きました。
「あれ?おかしいな」で足が止まる、これは脳の仕組みです
なぜ「おかしいな」で止まってしまったのか。
答えは、経験にないものを、脳は「異常」として処理できないからです。
反応があるはずの人に、反応がない。これを「異常だ」と結びつけるには、その前提として「反応があるのが普通」という体感が積み上がっている必要があります。
たとえば、あなたが毎日通る道に、ある朝いきなり大きな穴が開いていたら、すぐ気づきますよね。毎日見ているからです。でも、初めて歩く道に穴が開いていても、「こういう道なのかな」と思って通り過ぎてしまう。
新人のときの病室は、まだ「初めて歩く道」なんです。
「気づけなかった」の正体
- 異常に気づくには「正常の蓄積」が要る
- 新人は正常のサンプル数がまだ少ない
- だから気づけなかったのは、経験の量の問題であって、注意力や責任感の問題ではない
- 逆に言えば、回数を重ねれば必ず気づけるようになる

「なんで気づけなかったんだろう」って自分を責める人、すごく多いんだけどね。気づくための材料が、まだ手元にないだけなんだよ。
正直に書くと、当時の私は仕事をなめていました
もうひとつ、白状しておきたいことがあります。
当時の私は、仕事をなめていました。
検温は、とりあえず患者さんのところに行って、血圧と熱を測って、適当に話して、次に行けばいい。そういうものだと思っていたんです。
だから「反応があるはずの人が、反応しない」という事態が、そもそも想定の外にありました。見に行ってはいたけれど、見てはいなかった。
これは経験不足とは別の話で、完全に私の姿勢の問題です。
ただ、ここであなたに「だから真面目にやりなさい」と言いたいわけではありません。逆です。姿勢が甘かった私でも、20年やってこられたということを知ってほしい。
検温を「作業」にしないための、5秒の工夫
- 部屋に入ったら、測る前に顔を見る
- 「◯◯さん」と名前を呼んで、返事の速さを見る
- いつもより返事が遅い・声が小さい、を「なんとなく」で覚えておく
- 数字を測るのは、そのあとでいい
※違和感の段階で報告するかどうかは、必ず先輩に相談してください。「報告するほどじゃないかも」の判断が、いちばん危ないです。

測ることばっかり考えてました……。顔を見る前に、血圧計を巻いてました。

私もそうだったよ。数字は機械が測ってくれる。人間にしか測れないのは「いつもと違う」のほうなんだ。
「人を集めて」の「人」が、わからなかった
これ、笑い話みたいですが、けっこう本質的だと思っています。
「人を集めて」と言われて、私は誰を呼べばいいかわかりませんでした。
急変時に誰が来るのか、どうやって知らせるのか。それは平時に決まっていることです。でも私は、それを知らないまま夜勤に入っていました。
今日のうちに確認しておくこと(3つだけ)
- 自分の病棟の急変時のコール方法(院内PHS/緊急コール番号/ナースコールの特定ボタン など)
- 夜勤帯に誰が応援に来るのか(リーダー/他病棟/当直医)
- 応援要請の合言葉(「急変です」「コードブルー」など、施設で決まった言い方)
※名称も手順も施設ごとに違います。必ず自施設のマニュアルで確認してください。

これね、急変が起きてから調べる時間は絶対にないの。平時に1回見ておくだけで、あのときの私みたいに固まらずにすむよ。
新人が急変でやる3つと、やらなくていい3つ
整理します。
やること
- その場を離れずに応援を呼ぶ(ナースコール・緊急コール)
- 時刻を見る(発見時刻は、あとで必ず必要になります)
- 頑まれたことを、ひとつずつやる(記録、他患者さんのナースコール対応、物品を取ってくる、など)
やらなくていいこと
- 原因を考える(医師と先輩の仕事です)
- 判断する(あなたの判断は求められていません)
- きれいに報告する(「反応がないです」で十分です)
3つ目が特に大事です。急変の第一報に、整った報告はいりません。
「◯号室の△△さん、反応がないです。来てください。」
これで完璧です。SBARも、経過の要約も、このタイミングでは不要です。

ちゃんと状況を説明しなきゃって思ってました。

それで3秒遅れるくらいなら、「反応がない」だけ叫んで。情報は、人が集まってから揃えればいいんだよ。
そのまま使える|応援の呼び方
第一報(考えずに言えるように、声に出して練習しておく)
- 「◯号室、反応がありません。すぐ来てください。」
- 「◯◯さん、急変です。応援お願いします。」
自分がその場を離れられないとき
- 「誰か来てください! ◯号室です!」(廊下に向かって声を出す)
- ナースコールを押しながら「◯号室、急変です」
呼んだあと、先輩が来るまでにできること
- 時計を見る(発見時刻を覚える/メモする)
- ベッド周りのスペースを空ける(椅子・オーバーテーブルをどける)
- 患者さんのそばを離れない
※胸骨圧述や気道確保などの具体的な手技は、訓練を受けた範囲・施設の取り決めの範囲で行ってください。判断に迷ったら、その場の先輩の指示を優先してください。
いちばんやってはいけないのは「その場を離れる」——私はやりました
ここは、自分の失敗をはっきり書いておきます。
私は、廊下に出て、先輩を探しに行きました。
気持ちはわかります。人を呼ばなきゃ、と思った。でもあれは、患者さんのそばを無人にしたということです。
いまなら、こうします。
あのとき取るべきだった行動
- その場でナースコールを押す
- 押しながら、廊下に向かって声を出す
- 患者さんのそばを離れない
「探しに行く」は最後の手段です。呼ぶ手段が室内にあるなら、足で探さない。

探しに行った20秒って、あとから考えるとすごく長いんだよ。しかもその20秒、患者さんは1人なんだよね。

……こわいです。

うん。でもね、怖いと思えたなら、あなたはもう次から離れないよ。 私がそうだったから。
振り返りをしなかった私が、いま思うこと
後日、病棟師長から声をかけられました。
言われたのは、「そういうこともあるよ」。それだけでした。
当時の私は、かなり焦っていたはずなのに、その一言で「まぁ、そういうこともあるよな」と、ものすごく軽く受け止めてしまいました。そして、振り返りをしませんでした。
いま思うと、あれはもったいなかったと思います。
師長の言葉は、追い詰めないための優しさだったと思います。実際、あの一言で救われた部分もありました。でも「もう終わったこと」にしてしまったせいで、何がわからなかったのかを言葉にしないまま、次に進んでしまった。
だから私は20年たっても、あの夜のことを「覚えていない」としか言えません。
急変のあと、3つだけ書き出しておく
- 自分が最初に気づいたこと(違和感でもいい)
- わからなかったこと(用語・手順・誰を呼ぶか)
- 次に同じ場面が来たら、最初にやること
※完璧な振り返りでなくていいです。メモ3行で十分です。書いておくと、「覚えていない」が「覚えている」に変わります。

わからなかったことを書くの、ちょっと勇気がいりますね。

そうだね。でもわからなかったことは、あなたの欠点じゃなくて、次に埋める場所だから。リストなんだと思えばいいよ。
「怖い」と感じているなら、それは見えている証拠です
最後に、これだけは伝えさせてください。
急変のあとで「怖い」と感じているあなたは、そのとき起きていたことの重さが、ちゃんと見えているということです。
何も感じない人は、怖くなりません。
あの夜の私は、正直そこまで怖くなかった。軽く受け止めて、そのまま進んでしまった。だから20年たって、いまこうして書いています。
怖いと思えたなら、あなたは私より、ずっと早い。
よくある質問|急変と新人
Q. 急変のとき、固まって動けませんでした。向いていないのでしょうか?
A. 向き不向きの問題ではありません。初めての急変で動けるほうが例外です。固まるのは、脳が「経験にない事態」を処理できていないだけで、回数を重ねれば必ず動けるようになります。まずは「わからないまま呼ぶ」の1つだけ決めておいてください。
Q. 「急変かもしれない」と思っても、違ったら恥ずかしいです。
A. 違っていて構いません。むしろ「違った」が何度もあるほうが健全です。呼ばれた先輩は、空振りを責めません。責める職場のほうが問題です。判断に迷う段階で相談するのが、いちばん安全です。
Q. 第一報は、どこまで言えばいいですか?
A. 「◯号室の△△さん、反応がないです。来てください」で十分です。バイタルも経過も不要です。情報は人が集まってから揃えます。
Q. 胸骨圧述は新人でもやっていいのでしょうか?
A. 施設の取り決めと、あなたが受けた訓練の範囲によります。BLSを受講しているなら、その場の先輩の指示に従って交代要員に入ることはあります。判断に迷ったら、必ずその場のリーダーに確認してください。
Q. 急変のあと、記憶があいまいです。記録はどうすれば?
A. 覚えている範囲で、事実だけを書きます。「発見時刻」「発見時の状態」「誰を呼んだか」の3つが書ければ十分です。曖昧な部分を推測で埋めないでください。わからないことは、先輩に確認してから書きます。
まとめ|わからないまま呼んでいい
✅ 今日から使えるチェックリスト
- □ 急変でやることは「わからないまま、人を呼ぶ」の1つだけ
- □ 状況の理解を待たない。理解は人が集まってからでいい
- □ 第一報は「◯号室、反応がありません。来てください」で完璧
- □ 原因を考えない・判断しない・きれいに報告しない
- □ その場を離れない。まずナースコールを押す
- □ 足で探しに行くのは最後の手段
- □ 発見した時刻を見る(あとで必ず必要になる)
- □ 呼んだあとはベッド周りのスペースを空ける
- □ 自施設の急変時コール方法を、平時に1回確認しておく
- □ 夜勤帯に誰が応援に来るのかを知っておく
- □ 検温は、測る前にまず顔を見て、名前を呼ぶ
- □ 「いつもより返事が遅い」を覚えておく
- □ 急変のあと、メモ3行で振り返る
- □ 「怖い」と感じたなら、それは見えている証拠

あのね、最後にもう一度だけ言わせて。わからないまま呼んでいいんだよ。むしろ、わからないからこそ呼ぶの。 理解できてから呼ばうとすると、その時間がまるごと空白になっちゃうから。

……わからないまま呼んでいい。それだけ覚えておけばいいんですね。私、次に「あれ?」って思ったら、探しに行かないでナースコール押します。ありがとうございます、しーちゃん!
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